かくれキリシタン ローマ法王との“対面”心待ち ミサ参列へ「先祖に報告」

かくれキリシタンの祭事の場、山神神社でミサ参列の意義を語る深浦さん=新上五島町桐古里郷

 24日にローマ法王フランシスコが長崎市松山町の県営ビッグNスタジアムで執り行うミサに、キリスト教信仰が禁じられていた時期の信仰形態を守り続けている「かくれキリシタン」が招待されている。禁教期の潜伏キリシタンは「ローマのお頭様」を崇敬していたと伝わっており、かくれ信者は「先祖に報告したい」と法王との“対面”を心待ちにしている。
 カトリック長崎大司教区によると、ミサには長崎、平戸、五島各市と新上五島町で信仰を続けているかくれ信者計約30人を招待。担当者は「イエス・キリストへの信仰を続けてきた仲間であり、共に法王を歓迎したい」と説明する。
 かくれ信者は1873年に信仰が解禁された後も教会と距離を置き、仏教や神道を装っていた潜伏期の信仰形態を続けている。長崎地方の潜伏キリシタンは、長崎市北西部の樫山に3度お参りすればローマの教会に参拝したことになると言い伝え、法王への崇敬を保ち続けていたといわれる。
 過去には、カトリック側がかくれ信者を「離れ」などと呼び、異端視する風潮もあった。だが1981年にローマ法王として初来日したヨハネ・パウロ2世は、他宗派・宗教間の対話に積極的で、長崎市で開かれた歓迎集会などにかくれ信者を招待した。法王フランシスコも同様に対話を重視している。
 新上五島町桐古里地区で信仰を続けるかくれ信者はミサに6人が参列する予定。同地区にも、禁教期に長崎市外海地区で伝道した「バスチャン」という人物が、ツバキの木に指で十字架の印を残したという言い伝えが残る。大将(代表者)の補佐役を務める深浦慎吾さん(31)は「もし謁見(えっけん)が実現するならば、持参する地元のツバキの苗木に神のご加護が得られるよう祈ってもらいたい。持ち帰って平和のシンボルとしたい」と期待を述べた。
 長崎市黒崎のかくれ組織の帳方(指導者)、村上茂則さん(69)も参列する意向だ。「私たちの存在を認めてくれた法王に感謝している」と話す。
 平戸市生月地区のかくれ信者も招待されている。舩原正司さん(57)は「信仰が日本に伝わった当時の先祖の思いと重ね合わせたい。信仰を次世代につなぐため、法王の思いや考えが糧になればいい」と話している。

先祖代々伝わる「オラショ(祈り)」を唱える村上さん=長崎市下黒崎町、枯松神社

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