読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、貯金ゼロ、教育ローンの返済に追われる47歳の専業主婦。住宅ローンの返済も保険の契約者貸し付けに頼ります。子どもが独立するのを機に家計を立て直したいといいますが……。FPの横山光昭氏がお答えします。
貯金がありません。子どもたちの学費のために今まで教育ローンをたくさん組んでしまいました。住宅ローンもあと16年残っています。ボーナス払いも使いながら返済していますが、この8年ほどはボーナスが出ておらず、保険の契約者貸し付けを使ってなんとか支払っています。
老後の準備もしなくてはいけないので、ローン返済に追われる生活をなんとかしたいと思っています。自分もしばらくはフルタイムで働き、ローンの早期返済を目指していましたが、体調を崩したため今は専業主婦をしています。そろそろまたパートででも働きたいと思っているのですが、忙しくしてまた体調を崩すことがないようにと夫に言われており、まだ働き先を見つけることができていません。
子ども2人が春から社会人となり、独立するので、家計を改善するいいきっかけの時だと思っています。少しでも貯金ができるよう、アドバイスをお願いします。
<相談者プロフィール>
・女性、47歳、既婚(夫:52歳、会社員)
・子ども2人:長女(23歳、大学院生)、次女(21歳、大学生)※2人ともこの春卒業
・職業:専業主婦
・毎月の手取り金額:31.6万円
・年間の手取りボーナス額:なし
・貯金:なし
<教育ローンの状況>
1:180万円・1.6万円・4年
2:100万円・0.9万円・5年
3:50万円・0.5万円・5年
4:190万円・1.3万円・13年
5:100万円・0.8円・14年
6:180万円・1.6万円・10年
【支出の内訳(36.4万円)】
・住居費:10.3万円(住宅ローン、残16年)
・食費:5万円
・水道光熱費:2.6万円
・生命保険料:3.3万円
・日用品代:1万円
・通信費:2.8万円(春から子ども分1.6万円がなくなる)
・医療費:0.7万円
・交通費:0.5万円
・お小遣い:2万円(夫のみ)
・教育ローンの返済:6.7万円
・その他:1.5万円
横山:ご相談ありがとうございます。教育費が十分準備できず、ローンを頼ってしまったのですね。返済がかなり家計を圧迫しているようです。どうすると貯金ができるようになるか、考えてみましょう。
家計の「見える化」で不要な支出を削減
貯金ができるようになるためには、支出が収入より少ない状態を作らなくてはいけません。家計状況をうかがうとあまり削減できそうな支出がなさそうだと思うかもしれませんが、この中にも不要な支出がいくつも含まれているはずです。
必要な支出か、そうでないかを見極めるには、ざっくりとでもよいので支出を記録してみることから始めてみてはいかがでしょうか。もし家計簿が苦手であれば、家計簿ではなくノートなどでもよいので、何にいくら使っているのか、お金の記録をしてみるのです。
その記録をもとに、できればお嬢さんも含めて、不要な支出はどれかを話し合ってみましょう。優先順位が低い支出はカットしたり、後回しにするなどして支出の仕方にメリハリを付けます。
春からお子さんが二人が独立するので、生活費全般が二人分減るように見込みがちですが、意識しないと人数は減ったけど支出は変わらないということにもなりかねません。
スマホ代や生命保険料は、契約の内容が妥当か見直すことも必要です。スマホは契約時に余計なプランが付いてしまっていることもありますし、生命保険はあまり必要性のない保障(特約)が付いた状態になっていることもあります。そういった部分がないかも確認しましょう。
大雑把でも支出を見直そうと思って動き始めると、減らすところを見つけることができるものです。頭で考えず、実行しながら見つけていただければと思います。
このままでは住宅ローン破綻…リスケも視野に
ところで、毎月の収支以外に、住宅ローンのボーナス払いも大きな負担になっているそうです。今は保険の契約者貸し付けでなんとかなっているかもしれませんが、いつまでも借りられるわけではありません。住宅ローンの返済ができなくなる可能性があるので、現状のままではキケンです。
ご存知でしょうか。収入が減るなどして返済が難しくなった方を対象に、銀行が相談に乗ってくれる場合があります。家計状況をしっかり見据えても無理だという場合には手立てになります。本当に生活に困窮した時に検討できる一つの策だと思ってください。ただし、支払総額が増えることになる場合もあるので、全体を見て判断するようにしましょう。
またはローン残高や金利などによっては「借り換え」もよいかもしれません。借りた当初はボーナスがあったようですが、今はないということなので、現状にあった返済方法にすべきです。毎月の支払いはきつくなるかもしれませんが、ボーナス払いなしのローンに変更できれば、ボーナス月のやりくりに悩むことはなくなります。
老後資金は定年を迎える前が勝負!ローン返済は子どもにも手伝ってもらって
お子さんが独立するのですから、そろそろ老後資金の準備にも本気で取り掛かるべきです。ご主人の退職金があるのかもしれませんが、それだけでは足りない場合も大いにありえます。
老後資金は年金以外に2000万円ほどあったほうがよいという報告がありましたが、それは個人や暮らし方によって異なるものなので、鵜呑みにする必要はありません。ですが、やはり年金だけでは不足するであろうということは、多くの人に当てはまりますので、ご主人が定年退職を迎える前が勝負なのです。
もし可能なら、お子さんとお話しした上で、家計を手伝うことができないか検討してもらうことも一つではないでしょうか。別居であっても仕送りをしていたり、親が払っている教育ローンの返済を手伝っているお子さんもいます。なぜ奨学金ではなく教育ローンなのかはわかりませんが、お子さんと当初の学費について少し話してみてはいかがでしょう。
また、体調を崩されて仕事を退職されたということですが、もう回復され、働きたい気持ちがあるのであれば、引き続き無理がなく働けるところを探し、収入を増やすこともよいと思います。
お子さんが独立される春に向けて、お金の使い方やローンとの付き合い方などを整えると、状況が劇的に変わる可能性はあります。まずは家計を見ることから始めてください。