平和宣言文 被爆者の手記引用へ 長崎市が修正案

 長崎市は4日、被爆75年となる今年8月9日の平和祈念式典で、田上富久市長が読み上げる平和宣言文の起草委員会の最終会合を市内で開き、被爆者の手記を引用するなどした修正案を提示した。原案で日本政府に求めていた核兵器禁止条約への署名・批准について、修正案では国会議員にも呼び掛ける文言にした。
 前回会合では被爆者の詩を引用した昨年の宣言文を引き合いに、原案に被爆の生々しい惨状が描かれていないとして、委員から不満の声が上がっていた。修正案には長崎原爆で妻子を亡くした被爆者の手記の一部を盛り込み、委員から「被爆の実相が伝わる」と評価する声が相次いだ。
 一方、核禁条約の署名・批准を巡り、国会議員への訴えを加えたことについて、田上市長は終了後の取材に「国会議員に働き掛けて政府を動かしていく流れも大事だという市民の声も多い」と説明した。
 修正案ではこのほか、新型コロナウイルスへの対応を続ける医療従事者と、つらい体験を語り続けてきた被爆者とを重ね合わせ、核廃絶を世界に訴えてきた被爆者に敬意と感謝を込めて拍手を送る文言も追加した。6月の沖縄全戦没者追悼式の平和宣言で、被爆地と「平和を願う心を共有する」と訴えた沖縄との「連帯」にも言及した。
 最終会合では、被爆者援護に関し、長崎原爆被災者協議会(長崎被災協)の田中重光会長(79)は「被爆体験者を被爆者と認めるべきだとの文言を入れてほしい」と注文。平和団体「ピースバトン・ナガサキ」の調仁美代表(58)は「(新型コロナウイルスの影響で)式典に参列できない被爆者たちの存在も感じられるような文言も必要」と要望した。
 起草委は市長や被爆者ら15人で構成。市は指摘を踏まえ、今月末までに内容をまとめる。

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