台風10号 避難所133カ所「満員」 想定上回り「検証必要」

新型コロナウイルス感染症対策のため、ビニールシートで仕切った避難所=6日午前9時44分、対馬市交流センター

 大型で強い勢力で長崎県を襲った台風10号に伴い、県内各自治体が開設した避難所のうち、12市町の少なくとも133カ所で収容定員に達する満員状態だったことが8日、長崎新聞社のまとめで分かった。自治体が設けた避難所全体(742カ所)の18%に当たる。新型コロナウイルス感染症対策で1カ所当たりの収容人数を制限する中、想定を大きく上回った所もあり、近隣の避難所を案内するなど自治体は対応に追われた。
 県によると、各自治体は今月の台風9号時(247カ所)から避難所を増設。それでもピーク時には9号の約1670人を大きく上回る5万人超が駆け込み、満員状態が相次いだ。
 特に9号でも被害が発生した離島では住民の危機感が高まっていた。新上五島町では避難所22カ所のうち、7カ所で満員。近隣の避難所へ案内した。
 青方郷の谷村静子さん(72)は、姉家族12人と「人生で初めて」避難所に向かった。身を寄せた町石油備蓄記念会館は6日朝から行列ができ、午前中には既に満員になっていたという。谷村さんは「他の所を案内された人もいて、気の毒に感じた」と振り返る。
 五島市は5日午前8時半に指定避難所42カ所を開設。自主避難所なども含め計62カ所に約4400人が避難した。市総務課によると、近年の避難者は多い時でも200人台。今回は約20倍に跳ね上がった。避難者同士の距離を保つなどコロナ対策も取ったが、同課の担当者は「『コロナより避難』という声もあり、現場の職員は板挟みになった」。感染症対策と避難所運営のバランスの難しさを明かした。
 52カ所のうち7カ所が満員となった対馬市。比田勝尚喜市長は8日の定例市議会で「避難所の運営体制について十分な検証が必要」との考えを示した。
 県内最多の約1万2千人が避難した長崎市は49カ所で満員に。備蓄していた約9千セットの毛布とマットは一部で不足する事態になった。
 西彼長与町は、満員の避難所を訪れた住民を公用車で別の避難所まで送り届けた。町の担当者は「やってよかったと思うが、本来望んでいない避難所に行くことになり、不満はあったと思う。避難所が満員になったのは、想定外とはいえ町側の不手際。災害が激甚化する中、課題を洗い直していきたい」と語る。
 県危機管理課は、大勢の人が避難したことは「結果的に被害を最小限に食い止められた要因の一つ」とみる。一方、満員の避難所が出たことについては「避難者の想定を検証する必要があり、避難所のコロナ対策に改善点がないか、確認したい」としている。

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