残り5カ国

 〈面積は東京23区のおよそ半分、人口は約50万人。ふわふわもふもふと毛並みの長い小型愛玩犬「マルチーズ」の原産地で、「東西冷戦」の終わりを告げた1989年の米ソ首脳会談の開催地としても知られる…〉▲テレビの早押しクイズなら「マルチーズ…」の辺りで勘のいい解答者の指が動くはずだ。正解は昨日の1面にある地中海の島国「マルタ」。核兵器禁止条約の45番目の批准国になった。敬意を込めつつ、同国のプロフィルを▲条約発効に必要な批准国数は50で、残り5カ国。核を巡る新たな国際ルールはいよいよ発効への秒読み段階を迎える▲条約の制定交渉について〈一緒にやる人、集まれ-と「この指止まれ」が始まった。だけど、あの子が来ない〉と書いたのは4年前の秋。「あの子」はもちろん「唯一の戦争被爆国」の日本政府だ▲しかし、条約に対する政府の態度は変わる気配すらない。国際NGO「核兵器禁止国際キャンペーン(ICAN)」の川崎哲氏は21日、講演で同条約の締約国会議に触れ「日本政府は少なくともオブザーバー参加すべき」と主張したそうだ▲署名でも批准でもなく、せめて傍観者で-とハードルを下げられ、それでも腰が上がらないとしたら…。この国は世界に「核」を語る資格を失ってしまいそうな気がする。(智)

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