国際署名 県内50万筆達成 「批准迷う国に刺激」 被爆者、核廃絶の思い新た

 「批准を迷う国に大きな刺激になる」-。ヒバクシャ国際署名が、県内で目標に掲げられた50万筆に達したことを受け、本県の被爆者らからは9日、署名の力への期待感や、核兵器禁止条約に背を向けている日本政府へ批准を強く求める声が聞かれた。
 同署名は2016年4月、長崎の被爆者の象徴的存在だった谷口稜曄(すみてる)さん(故人)やカナダ在住の被爆者、サーロー節子さんら9人の被爆者が核兵器廃絶などを訴え始まった。しかし、被爆から75年が経過する中、核廃絶を見届けぬまま、多くの被爆者が他界。長崎市内で会見した県民の会の田中重光共同代表(79)は「道半ばで倒れていかれた方々に感謝を伝えたい」と述べ、核廃絶への思いを新たにした。
 核兵器の開発や保有などを全面的に禁じた核禁条約は、発効に必要な批准数まであと6カ国・地域に迫る。会見に同席した朝長万左男共同代表(77)は、「署名が条約の批准に迷っている国にも大きな刺激になる。米国の“核の傘”に依存している日本も、条約に参加し他国を巻き込んでほしい」と訴えた。
 全国で集まった署名は3月末現在、約1184万筆。長崎市出身で、同署名事務局(東京)キャンペーンリーダーの林田光弘さん(28)=川崎市=は「多くの県民が署名に触れ、県民一丸となったムーブメントになったと思う」と評価。「被爆者を中心に宗教団体や生協などいろいろな人たちが力を合わせた結果であり、今後の反核平和運動のモデルになるような4年間になった」と語った。
 代表賛同人で、長崎市の田上富久市長は「この活動が後押しとなり、一日も早く発効することを願っている。市としても、署名された方々の思いを力に、核兵器のない世界の実現に向け、取り組んでいく」とのコメントを出した。

© 株式会社長崎新聞社