羽ばたいたオシドリ

 紫色がかったピンク、と言えばいいのか、雲仙ツツジの色をした「JS」の文字が街に映える。きのう長崎市内で見掛けた「十八親和銀行」の支店の看板は目に鮮やかで、その色はほの温かい▲JSとは「十八」「親和」の頭文字を並べたシンボルマークで、長崎の県民鳥、オシドリ2羽が寄り添う姿を表している。「おしどり夫婦」というように、その鳥は愛情が豊かで、こまやかなイメージがある▲鳥の姿と、地域に密着し、親しまれる銀行のありようを重ねたという。十八、親和の両銀行がきのう合併し、新銀行が誕生した▲その方針が示されたのは4年半ほど前で、ライバル同士の合併に県民はあっと驚いた。人口が減り、金融の市場がしぼむことを考えれば、「競う」よりも「組む」方がいいと、安心する声が上がった。慣れ親しんできた地銀なのに、と寂しがる声もあった▲驚きと安心と寂しさと。さらに公正取引委員会の審査が長引いたときの不安、もどかしさもあり、合併劇は数々の感情を呼び起こしてきた。いま、県民が新銀行に求めるのは、何よりも「頼もしさ」だろう▲コロナ関連で両銀行に寄せられた相談は、8月末までに7千件にも上り、多額の融資が承認されたという。素早く、細かく、力強く。「支える仕事」を山ほど抱え、オシドリは羽ばたいた。(徹)

 


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