森拓二郎頭取「事業継続寄り添う」、吉澤俊介会長「地域活性化へ重責」 【連載】十八・親和 合併の行方 インタビュー編

「コロナ禍でも企業が事業を継続できるよう、寄り添ってお手伝いする」と語る森頭取(左)、「地域活性化に向け新銀行が果たすべき役割は重い」と語る吉澤会長=長崎市、十八親和銀行本店

 1日発足した十八親和銀行は、森拓二郎頭取(旧十八銀行頭取)と吉澤俊介会長(旧親和銀行頭取)の2トップ体制を敷く。業務やエリアの分担はせず、「今後も話し合って運営する」という。2人に現状や課題を聞いた。

 

 -新型コロナウイルス感染の県内経済への影響は。
 ▼吉澤氏 業種を問わず影響が出ている。当行分も含めて融資は手厚いので、倒産は表面上増えていない。だが、これを機に休廃業する人もおり、今後表面化してくると思う。
 ▼森氏 感染がいったん収束しても、恐らく各企業の売り上げは以前のようには戻らない。どう事業を継続していくか。そこに寄り添ってお手伝いする。

 -コロナ関連の融資額は1千億円に上る。
 ▼吉澤氏 こういう時こそ支えるのが銀行の使命。積極的に全取引先を訪問し、資金を備えるよう声を掛けた。(親会社ふくおかフィナンシャルグループ=FFGと十八が昨年)経営統合していなかったら、これほどの対応はできなかった。

 -信用コストが膨らみ、経営を圧迫しないか。
 ▼吉澤氏 FFGは最近、将来景気が悪化した場合に備え貸倒引当金を十分に積んでおく「フォワードルッキング」と呼ばれる見積もり方法を採用した。倒産も少ないので心配ない。ただ企業の財務が痛み、業績も回復していないので、改善に向け丁寧にサポートしたい。
 ▼森氏 引当金を相当積み増したので、取引先の業績が厳しくなっても時間をかけて支援できるようになった。十八単独の体力ではできなかった。FFGという大きな後ろ盾を得た。

 -外部モニタリング(監視)委員会は統合1年目を「弊害はない」「成果が表れている」と総評した。
 ▼森氏 (統合以降、定期的に公表している)事業承継や販路開拓の支援件数などのKPI(重要業績評価指標)はほとんど達成している。これまで以上にお客さまに働き掛ける、という意識が行員に浸透している。

 -貸出金の県内シェアは7割近くまで回復したが、金利は低下し続けている。
 ▼吉澤氏 (日銀の)マイナス金利政策が続き、長期で借りたお客さまが借り直す場合も低金利になる。他行の攻勢も強く、防衛のため下げざるを得ない。
 ▼森氏 県内シェアをさらに大きく伸ばし、収益を上げるのは難しい。事業承継などソリューション部門に人材を投入していく。

 -佐世保の旧親和銀本店は人員が随分減った。
 ▼吉澤氏 役員が1人常駐している。私も取引先訪問時に立ち寄る。役員や部長はテレビ会議でやりとりするようになり、仕事をする場所を問わなくなった。

 -「福岡の銀行」にならず、主体性を発揮できるか。
 ▼森氏 FFG一体でやった方が効率的なものもある。だが、地域の事情によって変わるものは(新銀行が)判断していく。例えば、長崎は県民所得が福岡より低いので、若者向けに40年返済の住宅ローンをつくるとか考えられる。
 ▼吉澤氏 基本的に任されている。地元に裁量権がないということは全くない。長崎は福岡に比べ人口減少が激しい。地域活性化に向け新銀行が果たすべき役割はより重く、その取り組みがモデルケースになる。

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