地銀の役割

 慶事で新札が必要になったので、久しぶりに銀行の店舗に足を運んだ。何かの手続きで困っていたのだろうか。高齢の女性に窓口の行員が丁寧に教えていた。こまやかに応対をする姿勢は変わっていなかった▲銀行は店舗を通して多くの人から預かった現金を元手に、企業に貸し出し、金利の差額で利益を得てきた。しかし低金利が続き、このやり方はうまく回らなくなっている▲しかも店舗を持たないネット銀行や現金を使わないキャッシュレス決済が浸透。銀行の店舗を訪れる人は減った。大手の銀行は効率化を図るため、地方から“撤退”しているという▲十八銀行(長崎市)と親和銀行(佐世保市)が1日に合併し、十八親和銀行が生まれた。共倒れにならないためにこの道を選んだ。菅義偉氏が首相になる前「(地方銀行は)数が多すぎる」と述べたこともあり、地銀に再編を求める圧力は強まるに違いない▲人口が減っている地域に店舗を残していても、採算が取れないのは容易に想像できる。でも、デジタル化やキャッシュレス化の波に乗れない人もいる。こうした“弱者”にとって、こまやかな店舗網やサービスはこれからも必要とされるだろう▲過疎地の店舗を守りつつ、経営を安定させる-。難題だが、全国の地方に希望をもたらす成功例をつくってほしい。(明)


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