メクル第499号 芸術の秋 廃材アートに挑戦

児童が思い思いに楽しんで作った廃材アート作品

 暑くもなく寒くもなく、過(す)ごしやすい今の時期は創作(そうさく)活動に最適(さいてき)で、「芸術(げいじゅつ)の秋」ともいわれます。長崎市伊良林(いらばやし)3丁目の「風の大地美術館(びじゅつかん)」は展示(てんじ)作品を鑑賞(かんしょう)するだけでなく、来館者が絵を描(か)いたり、工作をしたりして表現(ひょうげん)する喜びを味わえるところです。10月24日には小学生が流木などを使った「廃材(はいざい)アート」に挑戦(ちょうせん)しました。どんな力作ができたのか、その時の様子とともに紹介(しょうかい)します。

「表現する喜びを味わってほしい」と話す上田さん

 この美術館は、画家「ウエダ清人(せいじん)」として知られる館長の上田清人(うえだきよと)さん(67)が、アトリエとして使っていた民家を改築(かいちく)して3年前にオープンさせました。上田さんは公立中学校の美術教諭(きょうゆ)をしていたこともあり、夏休みには自治会の依頼(いらい)を受けて子ども向けの絵画教室や木工教室を開いたりしています。  廃材アートに挑戦したのは、同市大手3丁目のみのりが丘(おか)児童クラブに通う小学1~6年の16人。材料は美術館近くの風頭公園に落ちていた木の枝(えだ)や、市内の海岸に打ち上げられた流木や漁具、貝殻(かいがら)など、上田さんが拾い集めたものを利用。子どもたちはどれを使い、何を表現するのか考えながら材料を選びました。

倒木や木片など材料はより取り見取り

 高学年の児童はのこぎりで切断(せつだん)したり、電動ドリルで穴(あな)を開けたり、低学年の子では接着剤(せっちゃくざい)やひもを使ったりして、材料を組み合わせていきました。魚や猫(ねこ)、鳥などを表現した作品の一つ一つにアイデアがいっぱい詰(つ)まっていました。
 4年の井上大雅(いのうえたいが)君(10)は、細長くて曲がりくねった枝の先端(せんたん)が伝説の竜(りゅう)の頭のように見えたそう。「大空を舞(ま)う竜」と名付けて、その枝に別の枝で角を取り付け、緑色の絵の具を塗(ぬ)って仕上げました。
 6年の兄、晃希(こうき)君(12)は、流木の先端の形が太古の空を飛んでいた翼竜(よくりゅう)の頭部のように見えたことから発想。三角の木の板を流木に取り付けて、翼竜の力強さを表現しました。

井上晃希君(左)が作った「翼竜」と、大雅君の「大空を舞う竜」

 5年の炭屋梨音(すみやりおん)さん(10)の作品のテーマは「風景」。木の板やアワビの貝殻などで作ったベンチやいすのミニチュア模型(もけい)で、「家に持ち帰ってキーホルダーを飾(かざ)りたい」と話していました。4年の尾道優里香(おのみちゆりか)さん(10)は、円い木片(もくへん)をタコの顔に見立てて麻(あさ)ひもで8本脚(あし)を付け、リボンを飾(かざ)って完成。「友達にプレゼントしたい」と笑顔を見せました。
 作品を作り上げた児童に、上田さんはこう話していました。「捨(す)てられて燃(も)やされてしまうごみを、皆(みな)さんが使い、生き返らせてくれた。一人一人が楽しみながら自分にしか作れないものにチャレンジしてくれたのもうれしい」と。
 そして、こんな言葉も投げ掛(か)けていました。「作品には自分の内面が表れます。意地悪な心では、意地の悪い作品しか作れません。学童クラブや学校でも友達と仲良くし、人に優(やさ)しい心で接(せっ)していると、温かくてすてきな作品が作れるはずです」

 


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