就任10年目 創成館・久留貴督「ここを目指して指導者に」  全国高校サッカー長崎県大会 創成館 初V

試合後、スタンドに向かって笑顔を見せる創成館の久留監督=トランスコスモススタジアム長崎

 11月8日に行われたサッカーの全国高校選手権長崎県大会で初優勝を飾った創成館。
 最後のホイッスルが鳴った瞬間、創成館の久留(ひさどめ)貴昭監督はあふれる涙を抑えることができなかった。激闘を終えたばかりの生徒と抱き合い、生徒と同じ顔で喜んだ。「めちゃくちゃうれしい。ここを目指して指導者になったから」。就任10年目の節目の年。当初は部員が11人に満たない状態からスタートし、県大会の決勝で負け続けるという苦難を経て、37歳の青年監督が夢をかなえた。
 現役時代はV・ファーレン長崎のDFや主将として活躍。2009年の日本フットボールリーグ(JFL)昇格に貢献した。11年初旬に引退する際、志したのが教師の道。大学時代に取得した教員免許を持って自ら売り込み、保健体育教諭として採用してくれたのが創成館だった。

 初めは部員をかき集めて何とか試合に出られる素人集団。そこから一人一人と真摯(しんし)に向き合って生徒の心をつかみ、チームは急速に力をつけた。就任5年目の県高総体と全国高校選手権県大会で準優勝。だが、ここからが本当の試練の始まりだった。
 全国切符に何度も王手をかけても、あと一歩届かない。準決勝まで会心の試合運びをしても、決勝で崩れる。大一番で出てしまう勝負弱さ…。「技術はあっても落ち着かせることができない。見えない部分が足りないから“ラストワンプレー”で決めきれなかった」
 苦い経験を重ねるたびに、精神面の教育を見つめ直した。接戦で負けた試合の映像を生徒と一緒に目に焼き付け、大事な試合の前こそ「冷静にやれ」と伝えた。浸透するまでに時間はかかったものの、この日勝負を決めたのは、その“ラストワンプレー”だった。
 「JFL昇格のときと同じくらい喜びは大きい。プラスここに生徒たちの喜びがあるから、やっぱりこっちの方がうれしいかな」
 勝てなかった時期は長く、つらく感じた。でも、今は何よりの財産だとも思える。「悔しい思いばかりさせても、子どもたちは信じて続けてくれた。たかが10年だけど、それが伝統になって今がある」
 これで大きな目標をクリアした。その喜びもつかの間、今後はもっと大きな戦いが待っている。
 「もう次を考えないといけない。やっとスタートラインに立てたから」。夢の続きを見に、全国へ向かう。

 


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