「彼岸ブリ」かまぼこに 長崎・木村蒲鉾 素材生かし風味豊か

木村蒲鉾の新商品「鰤照」

 木村蒲鉾(かまぼこ)(長崎市京泊3丁目)が、ブリを使ったかまぼこ「鰤照(ぶりてり)」を開発した。脂が乗っていないため生食に向かず価格が安い「彼岸ブリ」を活用。蒸してかまぼこにすることで、風味豊かにした。同社オンラインショップなどで販売している。
 彼岸ブリは3~5月に水揚げされるブリ。脂が少なく、生食用よりフライや冷凍切り身などに加工されることが多い。県総合水産試験場などによると、2019年に長崎魚市で取り扱ったブリの9割弱に当たる約7700トンが彼岸ブリ。供給過多で価格が安く、正月ごろの寒ブリが1キロ約千円なのに対し、彼岸ブリは同120円ほどという。
 同試験場はブリの付加価値向上を図ろうと、練り物での活用を模索。長崎蒲鉾水産加工業協同組合などに協力を求め、今年2月から木村蒲鉾が新商品開発に乗り出した。県農商工連携ファンドの助成も受けた。
 木村忠利社長(59)によると、脂の多いカツオやブリは、本来かまぼこには適さないが、彼岸ブリは脂の少なさが逆にマッチ。魚肉をたたいた「落とし身」の状態を使用して蒸すとブリの風味も残り、それを照り焼きにした。
 新型コロナウイルス禍で、商談会などで売り込むことができなかった分、ネット配信に力を入れた。新たに「鰤照」のホームページ(HP)を作成。料理人のユーチューバーに商品を使った動画を配信してもらった。刺し身のような薄造り、焼き物、チャーハンなど多彩なアレンジが好評で、動画公開後はHPへのアクセス数も増えたという。
 11月から販売を始め、価格は1個700円。木村社長は「コロナで大変な時期だが何かしないとジリ貧になる。素材を生かしたものができた」と手応えを語った。

新商品「鰤照」を手にする木村蒲鉾の従業員=長崎市、同社

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