種も仕掛けも

 〈さあ、よーく見てくださいよ、タネも仕掛けもありません。はいっ、ワン、ツー、スリー!〉-昭和っぽい語り口はご容赦を。日付に「1 ・ 2 ・ 3」が並ぶきょう3日は「奇術の日」▲さて、こちらは本紙の若手広告マンたちが紙面に仕掛けた優しさの“種”の話。ぽつんとブランコにのる寂しげな顔の女性。しかし、このページを光にかざすと、手作りの王冠を届ける女児の温かな「ありがとう」が透けて浮かぶ。11月30日付13面の全面広告▲テーマは「表と裏がつながれば」。コロナ禍でやまない感染者への誹謗中傷や医療従事者への冷たい視線。もう一度、皆で考えたい-そんな企画意図にたくさんの協賛をいただいた▲広告の一節に〈時に人は、自分の目に映る表だけしか見えなくなることがあります〉とある。感染が怖いのは誰も同じだが、その不安を薄っぺらで心無い言葉にしていないか、届けるべき言葉はほかにも…静かな問い掛けを行間に込めて▲長く窮屈なトンネルは続く。ただ、トンネルを出た先も、そこへ向かう道も、もっとたくましく、もっと優しくありたい。そのための素朴な出発点を広告の女児が教える▲表と裏を一つにしたポスターが県内の医療機関などに掲示される。皆が立ち止まり、皆が考える-そんなきっかけになるといい。(智)

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