「証言一貫」被爆者と認定、長崎地裁 長崎市に手帳交付命令

判決を受け、「勝訴」の旗を掲げる原告側弁護士(中央)ら=長崎市万才町、長崎地裁前

 長崎への原爆投下翌日に入市被爆したとする長崎市の女性(86)が、被爆者健康手帳の交付申請を却下した市の処分の取り消しなどを求めた訴訟で、長崎地裁(天川博義裁判長)は14日、女性を被爆者と認めて却下処分を取り消し、市に手帳交付を命じた。
 被爆から長期間が経過し、入市被爆の事実を裏付ける直接的な証拠がない中、途中で会ったとする親族らの証言の信用性が争われた。
 女性は昨年3月、母親や2人のきょうだいと原爆投下翌日に疎開先から自宅があった市内に入り、入市被爆したとして、手帳交付を申請。入市時に爆心地近くで会った親族らの証言などを証拠として提出した。市は、証言に記憶の食い違いがあるなどとして申請を却下していた。
 判決で天川裁判長は、親族らの証言について「おおむね一貫しており特に不自然、不合理な点はない」「約70年前の出来事について一部に齟齬(そご)があったとしても、そのことを殊更に重視するのは相当ではない」として、手帳交付を命じた。女性は市に損害賠償も求めていたが、判決は注意義務違反まではなかったとして退けた。
 田上富久市長は判決を受け「判決の詳細を確認した上で今後の対応について検討したい」とのコメントを出した。

 


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