メクル第513号<旬感 V・ファーレン>  FW玉田圭司選手(背番号11) 40歳、今も輝き続ける

「サッカーに育てられている。人生そのもの」と語る玉田選手

 J2第28節の愛媛(えひめ)FC戦。後半35分に途中出場した、その6分後でした。ペナルティーエリア手前右45度付近で得たFK。短い助走で放ったシュートが、ゴールに吸(す)い込(こ)まれました。自身のJ通算500試合出場を祝うメモリアル弾(だん)。“ここに玉田あり”を見せつけました。
 1試合を残し、ここまで24試合出場、5ゴール。数字以上に、今季はピッチでの存在感(そんざいかん)が光ります。時に配球役に回り、時にゴール前で決定的な仕事をする。自由に見えるその姿(すがた)の裏(うら)には、昨年の「試練」がありました。
 35試合に出場、7得点した昨年は「難(むずか)しい1年だった」と言います。これまで所属(しょぞく)した大きなクラブで「やってきたことが通用しなかった。チームスポーツだから1人でどうにかできるものでもない。共通理解(りかい)が必要」と思ったそうです。
 だからこそ今季は「周りの状況(じょうきょう)をよく見ながら、その時々に適(てき)したプレーを意識している。昔はドリブル好きで局面を打開するプレーだったけど、今は頭で考えながら。それがまた面白い」。40歳(さい)にしてなお、サッカーを楽しんでいます。
 38歳でJ1名古屋(なごや)グランパスを退団(たいだん)した時、一番に声を掛(か)けてくれたのが手倉森誠(てぐらもりまこと)監督(かんとく)でした。監督の人間味や言葉の重みを感じ、「自分を必要としてくれている」姿に心が動かされました。
 V長崎2年目の今季は、終盤(しゅうばん)まで昇格(しょうかく)争いを演(えん)じました。J1への道は絶(た)たれましたが、クラブは長崎の地でずっと続いていくもの。心にあるのは「サッカーには夢(ゆめ)がある」の言葉です。
 V長崎の前社長、高田明(たかたあきら)さんの言葉でもありますが、この言葉には、玉田選手の経験(けいけん)に裏打(うらう)ちされた重みがあります。
 各年代別の代表や五輪代表には選ばれていないけれど、トップで活躍(かつやく)する同世代の存在に奮(ふる)い立ちながら努力を重ね、24歳で日本代表に初選出。2006年、10年と2大会連続でワールドカップ(W杯(はい))に出場し、ブラジル戦でゴールを奪(うば)いました。同年代が引退していく中、自身は今も輝(かがや)き続けています。
 6歳で始めたサッカーから、夢をもらいながら35年間歩んでいる道。まだ続く、その先へ-。20日の今季最終戦も、その神髄(しんずい)を見せてくれるはずです。

 


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