雲仙市のこれから 金澤市政3期目へ<下> 地域交通 持続可能な外出支援へ

「チョイソコうんぜん」のお披露目式でテープカットする金澤市長(中央)ら=2020年10月11日、雲仙市役所

 「好きな時間に送り迎えしてもらえて便利。廃止になると困るので知り合いにも利用を勧めているんですよ」-。12月中旬、島原鉄道吾妻駅前で乗り合いタクシーを降りた長崎県雲仙市吾妻町の女性(80)は、こう話した。
 同市は今年10月、高齢者の外出支援などを目的に、人工知能(AI)を活用した乗り合い送迎サービス「チョイソコうんぜん」(乗り合いタクシー)の試験運行を市北部エリア(国見、瑞穂、吾妻、愛野町)で開始した。期間は2022年3月末まで。
 金澤秀三郎市長は2期目で、子育て世代への支援を充実させて移住・定住を促進。農地の大規模基盤整備では国見、南串山町で農業後継者が定着し、地域の児童数も増加に転じた。
 それでも人口減少に歯止めはかからず、08年に5万人を切った市の人口は現在約4万2700人。市の経済支援を受けた移住者は昨年度が76世帯152人、本年度は11月末現在で58世帯99人。今年4~9月の移住相談件数は昨年同時期よりも多く、市の担当課は「新型コロナ禍で地方移住を検討する人が増えているのでないか」とみている。
 進む人口減と少子高齢化で課題になるのが地域交通の維持。3期目を迎える金澤市長は移住・定住促進の施策を続けつつ、民間路線バスの減便・撤退で生じる地域交通の空白地域解消に注力する。
 試行中の「チョイソコ」は、地域交通を支援する「トヨタ・モビリティ基金」を活用して、アイシン精機(愛知県)が開発したシステムで運用。複数の利用予約をAIが処理し、最適な運行ルートを割り出す。運賃は1回200円。ごみステーションなどが停留所で、さらに病院や商店などが企業スポンサーとなって停留所を設けるのが特徴。
 市北部を車両2台でカバー。試行開始から日は浅いが、1台当たりの1日の利用者数の平均は6.6人(10月)から14.4人(12月)と徐々に伸び、市は車両を1台増やす検討を始めている。
 「高齢者の外出支援はQOL(生活の質)を高め、最大の介護予防になる」と金澤市長。市北部を軌道に乗せ、市南部(千々石、小浜、南串山)に運行エリアを広げ、市内全域をカバーしたい考え。
 持続可能な地域交通網の確立へ、既存の公共交通機関を補完しながら、「チョイソコ」利用者と企業スポンサーの数を増やして収入を確保し、市の財政負担をどれだけ減らせるかが鍵になる。


© 株式会社長崎新聞社