知事年頭あいさつ〔令和3年1月〕 山口県知事 村岡 嗣政

【はじめに】

 明けましておめでとうございます。

 すがすがしい新春を迎え、謹んで新年のお慶びを申し上げますとともに、県民の皆様にとりまして、本年がより良い年となりますことを、心からお祈り申し上げます。

 今年の夏には、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、1年延期となった「東京オリンピック・パラリンピック」の開催が予定されています。人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として、大会が無事開催されることを念願するとともに、本県ゆかりの選手の活躍は勿論、世界中のトップアスリートの皆さんの己の限界への挑戦がこの日本で繰り広げられることを期待しています。

 県政においては、直面する感染症の危機を乗り越えるとともに、コロナ禍から生まれた変化を県政推進に確実に取り込み、コロナの時代にあっても「活力みなぎる山口県」の実現に向けた取組を力強く、スピード感を持って前へ進めていく、充実した一年にしたいと考えています。

 

【コロナの時代の県づくり】

 新型コロナウイルス感染症の収束が未だ見通せない中、何よりもまず取り組むべきは、更なる感染拡大を防ぎ、県民の皆様の命と健康を守ること、そして、暮らしの安定を確保し、地域経済を回復基調に乗せていくこと、これが目下の最重要課題です。

 一方で、このコロナ禍を契機に、社会全体のデジタル化の必要性が改めて強く認識されるとともに、テレワークの急速な普及に伴い、時間や場所にとらわれない「働き方の新しいスタイル」が広がりつつあるなど、国民の意識や行動に大きな変化が生まれています。

 私は、こうした社会変革の動きをしっかりと捉え、国の政策にも的確に対応しながら、危機から生まれた変化をこれからの成長へつなげる取組をさらに加速させたいと考えています。

 

 

《感染拡大防止と経済の活性化》

 感染拡大の防止に向けては、県民の皆様にとって身近な地域での診療・検査体制を確保し、医療提供体制の一層の充実を図るとともに、感染者の急増につながるクラスター対策を強化するなど、引き続き、関係機関との連携の下、万全の対策を講じてまいります。

 同時に、中小企業制度融資等による県内経済の下支えや、落ち込んでいる観光需要、県産農林水産物の消費需要の喚起などに取り組み、社会経済活動を段階的に引き上げてまいります。

 

《デジタル化の推進》

 これからの社会変革において、その原動力となるのがデジタル化です。本県としても、官民を挙げて社会全般にわたるデジタル化を強力に進め、デジタル技術による変革、いわゆるデジタルトランスフォーメーション(DX)の取組を加速させてまいります。

 まずは、県自らが、行政手続のオンライン化やワンストップ化等に取り組み、県民や事業者にとって利便性の高いデジタル・ガバメントの構築を急ぐとともに、県政の様々な分野において、デジタル技術を活かした、より一層効果的できめ細かな行政サービスを提供していきたいと考えています。

 さらに、全県的なDX推進のための新たな拠点を設置し、市町や企業等からの相談対応やオープンイノベーションの実施、官民共有のオープンデータ基盤の構築、デジタル人材の育成などに取り組み、県内におけるDXの展開をしっかりとサポートしてまいります。

 即戦力となるデジタル人材の確保や、デジタル社会に不可欠な基盤である光ファイバ網や5Gの全国的な整備促進など、県だけでは対応が難しい課題については、私が本部長を務めます全国知事会デジタル社会推進本部を通じて国に対応を要請しており、引き続き、その早期実現を強く求めていく考えです。

 

《「ポストコロナ時代」を見据えたイノベーションの創出》

 近く改定する「やまぐち産業イノベーション戦略」においても、新たに「デジタルトランスフォーメーションの加速」を視点に加え、デジタル化による企業の成長・発展の促進に向けて、MaaSやスマートファクトリーなどの先導的事例の創出や、本県の強みである「ものづくり」の技術とデジタル技術の融合によるイノベーションの創出支援等の取組を進めてまいります。

 

《本県への新たな人の流れの創出・拡大》

 また、テレワークの経験等を通じて、現在、都市部の若い世代を中心に高まっている地方移住への機運を、本県へしっかりと呼び込んでまいります。

 テレワークを活用した移住者の受け皿づくりや、呼び込みのための新たな仕組みづくりなどを加速するとともに、休暇とテレワークを組み合わせた「ワーケーション」の推進や、首都圏での積極的なPR等により、本県への移住者の増加と、関係人口の創出・拡大につなげていきたいと考えています。

 

《「新たな日常」を支える人材育成》

 そして、こうした本県の将来を担い、未来を切り拓いていく多くの人材を育成するため、近く策定予定の「山口県新たな時代の人づくり推進方針」に即して、学びへの意欲を持つ子どもや若者にあまねく必要な教育を提供するとともに、「志」を育て、実現に向けた行動を支援する取組をさらに加速してまいります。

  

 

【今年の決意】

 コロナとの共存を前提とした「新たな日常」の中で、デジタル化等による変革の恩恵をすべての県民が享受し、これまでよりも豊かで安心・安全に暮らすことができる。私は、こうした社会こそが、コロナの時代にあって本県が目指すべき未来の姿であると考えています。

 その実現に向け、市町をはじめ、企業、大学、関係団体、そして県民の皆様とともに、総力を結集して、本県が直面する様々な課題を解決し、県民誰もが希望を持ち、安心して暮らし続けられる県づくりを力強く進めてまいりますので、県民の皆様の御理解と御協力をどうぞよろしくお願いします。

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