買い物支援バス 評判上々 南島原市社協など運行中

有家町新切地区対象 高齢者の生きがいづくりに

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高齢者の生きがいづくりにもなっている買い物支援バス=南島原市有家町

 島原半島最南端に位置する南島原市。市内には路線バスなど公共交通網が貧弱な地区が多く、高齢化も進み、日常の買い物が困難な住民が増加傾向にある。昨年8月、市社会福祉協議会と社会福祉法人「長和会」(長池庄一郎理事長)などが連携し、同市有家町新切地区の高齢者を対象に「買い物支援バス」の運行を始めた。高齢者の生きがいづくりや安否確認などのサロン的な機能も併せ持ち評判は上々。「うちの地域でも運行してほしい」との要望が相次いでいる。
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 昨年12月15日は穏やかな小春日和だった。同地区の男女7人が最寄りの停車場から乗車しそれぞれの“指定席”へ。「きょうの目玉商品は何だろうね」「車内は暖かい。薄着で大丈夫やった」など買い物情報や天気、近況など久しぶりの雑談に花を咲かせた。20分で市中心部の商業施設に到着。「さあ買い物、買い物」と笑顔で入店した。
 同地区は市中心部から車で5~10分ほど離れた中山間地域。人口は452人で65歳以上の人口は152人と約3割を占める(昨年9月末現在)。一昨年12月に2商店が閉店し野菜や果物を売る食料品店が一軒もない。商業施設が集まる市中心部までの路線バスは1日に数本だけ。高齢者らは食料品を買うため親族の車に乗せてもらったり、数千円払ってタクシーを利用したりすることもあるという。
 同社協は一昨年末、同地区の民生委員から相談を受け、高齢者に意向を調査。昨年3月、同会に買い物支援バスの運行を提案し、賛同を得た。同会の10人乗りバスを利用。上湯河内、中湯河内、下湯河内、広野、堀切、上新切の6自治会の65歳以上の高齢者が無料で利用している。
 毎週火曜午前9時半、同地区を出発しAコープ有家店(有家町)まで折り返し運行。約2時間程度の買い物時間を確保している。バスの提供や、ガソリン代、車両維持費(年間約30万円)は同会が負担。同社協が乗車人数の調整などの運行管理を担当している。
 利用者数は現在16人。この日乗車した春本カズエさん(79)は「便利で助かっています。みんなで乗るから話もできて楽しい」と笑顔。支援バスの運行に尽力した同社協の松永裕介さん(32)は「地域が抱える課題の一つを解決できてうれしい。ひきこもりがちなお年寄りが外に出るきっかけにもなれば」と話す。
 南島原署によると、昨年1~11月末までの市内の事故件数は計62件、うち高齢者が加害者となった事故は計24件で3割を超えた。中村彰宏交通課長は「免許返納後の移動手段(買い物支援バスなど)が確保されていれば、安心して返納できる。市全体に同様の支援が広がれば」と期待を寄せる。
 他の自治会からも同社協に同様の要望が寄せられている。だが、運行業務は一度開始すると公共的な責務があるため簡単に撤退できない。バスやタクシー会社など他の公共交通網の理解や、社会福祉法人ごとの運行エリアの調整などにも配慮が欠かせないという。
 松永さんは「課題山積だが、一つ一つ解決できることを模索し、地域と連携を図りながら最適な“カタチ”で支援していきたい」と前を見据えている。