核なき世界へ光明 被爆者ら核兵器禁止条約に高揚感にじませ

集会で、核廃絶運動への決意を新たにする朝長共同代表(中央)ら=長崎市、平和公園

 「今日が新たな核なき世界へのスタートだ」-。核兵器禁止条約が発効した22日、長崎市の平和公園では被爆者らが集会を開き、「長崎の鐘」を鳴り響かせるなどして喜びを分かち合った。ただ、条約には核保有国や米国の「核の傘」にある日本政府などは参加していない。参加者らは核廃絶への決意を新たにした。
 全ての国・地域に条約批准などを求めた「ヒバクシャ国際署名」に本県で取り組んできた県民の会が平和公園で開いた集会には、被爆者や市民ら約100人が集まった。「これまで被爆者が築いてきた運動が、ついに核兵器を国際法で禁止するところまで来た」。核廃絶への被爆者らの努力に触れた条約の発効に、同会の朝長万左男共同代表(77)は高揚感をにじませた。
 今年末にも第1回締約国会議の開催が予定されているが、日本政府は被爆者らが求めるオブザーバー参加に慎重姿勢。同会の田中重光共同代表(80)は「締約国会議に参加し、本当の意味で核保有国と非保有国の橋渡しをしてほしい」と求めた。核兵器を全面的に禁じた初の国際法規だが条約不参加国には順守義務がなく、実効性も問われる。県平和運動センター被爆連の川野浩一議長(81)は「被爆者が生きているうちに、条約を本当に実効性のあるものにしよう」と呼び掛けた。
 2014年の平和祈念式典で被爆者を代表し「平和への誓い」を述べた城臺美彌子さん(81)もマイクを握り、志半ばで亡くなった多くの被爆者に思いをはせた。「『喜んで。やっと核兵器が禁止になったよ』って伝えたい」。署名活動に参加し続けた田中安次郎さん(78)も「雨の日も猛暑の日も、コツコツと一筆ずつ署名を積み重ねた結果だ」と発効の喜びをかみしめた。
 長崎原爆がさく裂した午前11時2分、被爆者らが「長崎の鐘」を鳴らし、黙とう。原爆で壊滅的被害を受けた浦上天主堂でも鐘が鳴り、被爆地は祈りに包まれた。米ロを中心に、世界にはなお1万4千発弱の核弾頭が存在。集会では、被爆者らが核廃絶の願いを込め、世界中の核弾頭に見立てた140個の黄色い風船を一つずつしぼませ、最後の一つがしぼむと拍手が湧き上がった。
 参加した竹下芙美さん(79)は「毎月の座り込みは無駄じゃなかった。核廃絶のために生きている。これからも頑張りたい」。被爆者なき時代を見据え、山川剛さん(84)は「次の世代は『ヒバクシャを二度とつくらない』気持ちで生きてほしい」と思いを託した。
 連合長崎も爆心地公園で集会を開催。核廃絶への決意を示した宣言文を採択した。

© 株式会社長崎新聞社