【トラック&マラソン】鈴木朋樹 二刀流挑戦に迷いなし!! 日本人未知の領域を開拓したい

力強い走りを見せる鈴木(右)(トヨタ自動車提供)

【Restart パラヒーローズ その壁を乗り越えろ(24)】パラ陸上(T54)の鈴木朋樹(26=トヨタ自動車)は、トラックとマラソンの“二刀流”で世界に挑む。かねて目標とする東京パラリンピックまで残り約7か月。あえていばらの道を進むランナーの胸中とは――。

「どうしたらできるようになるかを探りながらやっていた」。生後8か月で交通事故に遭い、脊髄を損傷。物心ついたときから車いす生活だった。それでも「医師からは鉄棒とかブランコはできないんじゃないかって言われたけど、先生の介助とかもお願いして、鉄棒やブランコができるようになった」と一つひとつ壁を乗り越え、健常者の友人とともに学校生活を送っていた。

そんな活発な少年がパラ陸上の道を本格的に歩みだしたのは、小学5年のころだった。幼少期から通っていたクラブチームで2度パラリンピックに出場した花岡伸和氏(44=現日本パラ陸連副理事長)に出会ったのがきっかけだった。鈴木の走りを見た花岡氏が「自分よりも絶対に速くなるだろう」と才能を見抜き、定期的に鈴木の練習に付き合うようになった。

大学入学後には「パラの舞台で活躍できるような選手になりたい」と一念発起。パラリンピックへの挑戦が始まった。2016年リオデジャネイロ大会は出場を逃したものの、19年WPAマラソン世界選手権(ロンドン・マラソン)で銅メダルを獲得。マラソンで東京大会の切符をつかんだ。しかし、トラック種目の「800メートル、1500メートルでも必ず代表に入りたい」と満足する様子は見られない。

一見、二刀流は無謀な挑戦にも見えるが「海外で活躍している選手のほとんどは両立している。でも、日本人として二刀流でいい成績を残した選手がいないので、日本人でやっていない領域を開拓していきたい」ときっぱり。トレーニングについても「全部の種目に関して言えるのが加速力。自分は加速力をすごく優先している。だからこそ、トラック種目の練習をしていけばマラソンも勝てる」と自らの決意に迷いはない。

「こんなやつでもこれだけ頑張っているんだから、俺も頑張ろうって思えるような存在になりたい」。パラ陸上界の第一人者を目指すスプリンターの挑戦は、まだ始まったばかりだ。

☆すずき・ともき 1994年6月14日生まれ。千葉県出身。生後8か月で交通事故に遭い、脊髄を損傷。車いす生活となったが、養護学校ではなく普通校で健常者と一緒に学校生活を送った。小学5年のころに花岡伸和氏と出会い、パラ陸上を本格的にスタート。トラック種目の800メートルと1500メートルをメインに活動する一方で、マラソンにも挑戦。2019年WPAマラソン世界選手権(ロンドン・マラソン)では3位に入り、東京大会の出場権を勝ち取った。167センチ、61キロ。

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