無線を差し忘れたマグヌッセン。クラッチを失っていたLMP2ウイナーなど【デイトナ24時間決勝こぼれネタ】

 1月30〜31日にフロリダ州のデイトナ・インターナショナル・スピードウェイで決勝レースが開催されたIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権開幕戦のデイトナ24時間レース。

 ウェイン・テイラー・レーシングの3連覇、48号車の“ドリームチーム”に加わった小林可夢偉の激走などさまざまなハイライトがあったが、ここではスタッツのまとめや、米スポーツカーレース専門ニュースサイト『Sportscar365』が決勝後の取材でつかんだトピックの数々を紹介する。

■ちょうど30年前にクラス優勝していたアキュラ
 アキュラはIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の最高峰クラスがDPi規定となって以降、デイトナ24時間を制した2番目のマニュファクチャラーとなった。2020年までの4年間は、すべてキャデラックがデイトナを制していた。

 30年前の1991年2月3日、アキュラは主要な耐久レースで初となる勝利を、デイトナのキャメル・ライトクラスで挙げた。また、HPD(ホンダ・パフォーマンス・デベロップメント)としては、テキーラ・パトロンESMのリジェJS P2へのエンジン供給という形で、2016年のデイトナを制している。

 以上の実績はあるものの、2021年の勝利がアキュラ・ブランドにおける最初の総合優勝ということになる。

総合優勝の表彰式の様子

■「また戻ってくる」とジミー・ジョンソン
 小林可夢偉、シモン・パジェノー、マイク・ロッケンフェラーとともにアリー・キャデラック・レーシングの48号車キャデラックDPi-V.Rで出場した7度のNASCAR王者、ジミー・ジョンソンは総合2位でレースを終えた。

「これは、このレースにおける僕の3度目の2位フィニッシュだ」とジョンソンは語っている。

「今回の結果は特別なものだ。僕はまた、戻ってくるよ」

スタート前セレモニーでの48号車陣営。左からジョンソン、マイク・ロッケンフェラー、小林可夢偉、シモン・パジェノー

■コルベットの恐るべきリードラップ率
 コルベットは2016年以来となるワン・ツー・フィニッシュで、デイトナでの4回目のクラス優勝を果たした。2台のシボレー・コルベットC8.Rは終始クラスの先頭でレースを進め、じつに770周のうち716周のリードラップをマークした。

僚友の3号車に続き2位でフィニッシュした4号車シボレー・コルベット

■ヤン・マグヌッセンが息子ケビンへ何度も伝えたアドバイス

 キャデラック・チップ・ガナッシ・レーシングのケビン・マグヌッセンは、スポーツカードライバーとしての最初の公式レースのスティントにおいて、「ルーキー・ミステイク」をしてしまったと認めた。

 01号車キャデラックDPi-V.Rに乗り込んだ際、無線のジャックを接続するのを忘れていたのだという。

「なぜかは分からないけど、僕らは5秒を失った。そのせいで、トップだったのが3番手になってしまった」とマグヌッセンは語った。

 なお、マグヌッセンはレース前の金曜日に、父親であり、デイトナの元クラス・ウイナーでもあるヤン・マグヌッセンからのメモでメールボックスがいっぱいになっていた、と明かしている。

「父は、僕がピット出口でクラッシュするといった悪夢を持っていたようだ。なぜなら、昔から常にそのことを話していたからね」とケビン。

「父親は、ピット出口がどれくらい滑りやすいかについて、50回は教えてくれたよ。初めてピットアウトするときは、怖くて緊張した。でも、それほど悪くはなかったよ!」

チップ・ガナッシ・レーシングの01号車キャデラック

■“アートカー”でLMP2クラスを制したEraモータースポーツの試練
 LMP2クラスのウイナーとなったEraモータースポーツ18号車オレカ07は、レースの後半をクラッチがない(切れない)状態で戦った。ドライバーのライアン・ダルジエルは「エアジャッキが降りるたびに、ピットアウトする力を与えてくれたことを幸運の星に感謝したよ」と語っている。

 チームオーナー/ドライバーのカイル・ティリーが日曜の朝にIMSAラジオに対して語ったところによれば、チームは今季、フルシーズンエントリーするつもりだという。

 Eraモータースポーツは非常に忙しい数週間を控えている。ティリーとドワイト・メリマンは、ドバイで開幕するアジアン・ル・マン・シリーズに出場する予定もあるからだ。

Eraモータースポーツは6歳の男の子がデザインしたカラーリングでデイトナ24時間を戦った

■GTDクラス、レクサスの敗因とアキュラの今後
 GTDクラスの序盤をリードしたバッサー・サリバンの14号車レクサスRC F GT3は、クリーリングに関するトラブルの犠牲になったと、チームは明らかにしている。オリバー・ギャビン/ジャック・ホークスワース/カイル・カークウッド/アーロン・テリッツがドライブした14号車は、残りあと1時間というところでリタイアを喫した。

レース序盤に好走を見せていたレクサスRC F GT3勢

 今回のデイトナでは1台のみのエントリーとなったアキュラNSX GT3 Evoだが、次戦のセブリング12時間レースから、もう1台がエントリーする可能性がある。ホンダの長年の提携チームであるリアルタイム・レーシングは、今季の残りのミシュラン・エンデュランス・カップ(セブリング、ワトキンス・グレン、プチ・ル・マン)にエントリーするものと理解されている。

デイトナ24時間のGTDクラス、NSX GT3の参戦は44号車の1台のみだった

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 IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の次戦は、同じフロリダ州にあるセブリング・インターナショナル・レースウェイで行なわれる『モービル1・セブリング12時間レース』(3月20日決勝)となる。当初はWEC世界耐久選手権との併催イベントとして予定されていたが、WEC側はセブリングでのレース開催を断念している。

決勝仕様のデカールをまとうレクサスのペースカー

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