キックオフ<中> 全国の壁 16年間4強以上ゼロ 「サッカー王国」の面影なく 高校サッカー 100回目の冬へ

年始の全国高校サッカー選手権3回戦。昌平(埼玉)に先制点を許して立ちすくむ創成館の選手たち=さいたま市、浦和駒場スタジアム

 長崎県の高校サッカーはここ数年、どのチームが勝つか分からない混戦状態が続いている。ただ、群雄割拠という表現は当てはまらない。かつて島原商、国見が全国上位に絡み続けて「サッカー王国」と呼ばれた地に、その面影はほとんど残っていない。
 2004年度に国見が渡邉千真(現横浜FC)を擁してインターハイ優勝、全国高校選手権3位となったのを最後に、県勢は全国で勝てなくなった。以降16年間、全国主要大会で上位に進出したのは、14年度夏の海星と、17年度夏冬の長崎総合科学大付の3回のみ。いずれも8強で、4強以上は一度もない。
 特定のチームが長く頂点に君臨してきた長崎。知らず知らずのうちに県全体のレベルが他の都道府県に後れを取っていたのか。最近は新興チームの台頭でようやく底上げが進んできたものの、急速に進化を続ける全国の流れに追いついていない。「長崎県代表とは当たりたくない」という言葉は、聞こえなくなった。
 年末年始に行われた第99回全国高校選手権。長崎県代表として初出場した創成館は、初戦の2回戦で学法石川(福島)を1-1からのPK戦4-3で下して、全国初勝利を挙げた。だが、8強入りを懸けた3回戦は昌平(埼玉)に敗れた。0-3の完敗だった。
 「ある程度の自信を持って挑んだつもりだった。でも、いざやってみると、すごく差を感じた。これが現実」
 試合後、主将のMF岩﨑雄永は、壁の高さを痛感していた。県予選の全4試合を無失点で勝ち上がってきた堅守は、Jリーグ内定4選手を擁する実力校に通用しなかった。試合の注目度が高くなればなるほど、決定機のプレッシャーも全然違ってくる。実力も、経験も、足りていなかった。
 「緊張感がある中で、ああいう形の負け方になってしまった。足りない部分は身に染みて分かっている」。監督就任10年目、38歳にして初めてチームを全国の舞台に導いた久留貴昭は、悔しさを糧に飛躍を誓う。
 「これから1年間、徹底的にやる。初めての全国が選手権で良かった。選手たちは、すでに次の選手権を見ているんじゃないですか」
=敬称略=


© 株式会社長崎新聞社