【新型コロナ】職員疲弊「やるせない」 施設で感染当たり前の状況 福祉施設関係者の苦悩と訴え

クラスター発生の施設では100件以上の無言電話がかかってきた夜も。電話対応が業務を圧迫し、職員は「お叱りは収束してからにしてほしい」と切実な声を寄せた

 読者から寄せられた取材リクエストに幅広く応える企画「追う! マイ・カナガワ」。行政の支援が少ない中で、コロナ禍でも開所するデイサービス関係者の声を伝えた1日付の「追う! マイ・カナガワ」を読んだ神奈川県内のさまざまな福祉施設関係者から、悲痛な訴えが取材班に届いている。緊急事態宣言下で開所を継続する多くの施設で負担が増してスタッフは疲弊しており、支援の充実は急務だ。

 県内の保育所で園長を務める女性は「このやるせない気持ちはどこにぶつければいいのか」と、2度目の緊急事態宣言下で運営を続ける苦悩を寄せた。

 昨春の宣言の際は、保育所への登園自粛が要請され、保育料は返還。だが今回保育所は原則開所とされ、自主的に休園した世帯への保育料返還は、各自治体でばらつきが生じている。県によると1月18日現在、返還措置を取るのは県内5自治体。女性の地域では返還措置はない。

 女性の保育所は、子どもや職員の感染が相次ぎ、一時閉園。乳児を抱える職員やコロナ後遺症に苦しむ職員もいる状況で開所を求められることに「納得がいかない。先生たちは、疲弊している。以前のように保育料を返す措置を取ってくれたら利用する子どもが減り、保育士を休ませられるのに」と憤る。

◆クラスター 感染 拒否

 クラスター(感染者集団)が発生した県内の介護施設で働き、自身も感染した女性は「未感染職員の宿泊先が確保できない」と悩みを寄せた。

 女性の施設では対策を徹底しながらも、利用者や職員らが次々に感染。家族への感染リスクを避けるため、業務を続けざるを得ない未感染職員の宿泊先を探したが、ホテルなどには軒並み断られ、多くはやむなく自宅から通勤している。

 職員の離職や、職員の家族が出勤・登校を拒否される事態も生じている。運営会社の経営は圧迫され「夏のボーナスが出るかどうか」といい、行政に慰労金再給付を求めたいという。

 慰労金を巡っては別の施設職員から「法人単位での申請というくくりがあるため、他事業所の不備でまだ振り込まれない」との声も。家族が利用するデイサービスで陽性者が判明し、一時利用できなくなったという女性は「デイサービスに行けない間、リハビリや入浴に困った。支援を行政、福祉関係者で考えてほしい」との声を寄せた。

◆「感染拡大して当たり前」

 県内の障害児らが通う放課後デイサービスで働く女性も窮状を投稿した。

 女性の地域では、特別支援学校で陽性者が判明しても公表されず、濃厚接触者ではないと判断されれば周囲の児童・生徒はPCR検査を受けられない。一方で、マスクや手洗いを嫌がったり、目をこすった手で触れてきたりする利用者もおり、コロナ防止は困難を極める。学校で発熱しても、保護者が仕事中で預かるしかないこともあり、「複数の学校から預かっており、感染拡大して当たり前。子どもが一人で留守番ができない共働き世帯や、ひとり親家庭のみの預かりにすべきだ」と訴えた。

◆取材班から

 コロナ感染のリスクを抱えながら緊急事態宣言下でも営業・開所を続けざるを得ない施設の悩みは一様ではない。医療や飲食だけでなく、行政にはひとつひとつ現場の声に耳を傾け、応えていってほしい。

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