「春江水暖~しゅんこうすいだん」は「山水画の美学で描いた家族の映画」 シャオガン監督メッセージ映像

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グー・シャオガン監督作「春江水暖~しゅんこうすいだん」の劇場公開を前に、シャオガン監督のメッセージ映像が公開となった。

「素晴らしい」と感激したという日本版ポスターをバックにしたシャオガン監督は、「みなさん、こんにちは」と日本語でもあいさつ。映画について「山水画の美学で描いた家族の映画で人生と万物の四季についての物語」と語り、コロナ禍にある日本の観客を気遣って「平和と健康と幸せ」を祈る姿を見せている。最後は「よろしくお願いします」と日本語で締めくくっている。

あわせて著名人によるコメントも公開された。シャオガン監督と同世代である、「ヤクザと家族 The Family」の藤井直人監督は、「一生に一本の映画になりました」と称賛している。

「春江水暖~しゅんこうすいだん」は、グー・シャオガン監督の長編デビュー作でありながら 2019 年カンヌ国際映画祭批評家週間のクロージング作品に選ばれた作品。2019年の東京フィルメックスでは、審査員特別賞を受賞している。絵巻を広げていくような横移動スクロールのロングテイクや山水画の宇宙を感じさせる超ロングショットなどを使い、大きな変化を迎える中国社会の中で精いっぱいに生きている、ある市井の大家族の四季が描かれている。

【コメント】*順不同・敬称略

爆竹の喧騒と人々の哀愁の外に広がる雄大な自然風景。俯瞰的なカメラワークと音楽が重なった相乗効果から、現代中国の市井の人々の物語を見ているのに、悠久な時間の流れに身を置いているような気持ちになった。
\---王 舟(ミュージシャン)

最初は小津映画やホウ・シャオシェン(侯孝賢)、エドワード・ヤン(楊徳昌)の模倣かなと思って見始めましたが、とんでもなかった。
このところ日本でも力作中国映画の公開が続いていますが、その中でも際立つ傑作です。
\---藤井省三(中国文学者)

グー・シャオガンが本作の発想源に、文人山水画の最高傑作「富春山居図」を挙げるのは伊達ではない。風景を普遍的な絵画 世界に転生させるプロセスも含め、伝統絵画のエッセンスを、きわめて映画的な手法で再生させているのだ。時の移ろいによって変わりながら、なお変わらないものが、そこにある。
\---板倉聖哲(東京大学東洋文化研究所教授)

中国料理を学ぶ中で特に惹かれた食文化、江南地方の料理。その地域の一つ杭州、富陽を舞台にし、日本と同じ様な四季の自然の移ろいと呉の都の時代からの歴史的な景観と山水画を引用した美しいショットに引き込まれてしまいました。同時に現代の開発された建造物の存在や中国の文化的背景、急激な発展に伴った中国社会の問題やリアルを家族それぞれの視点から表現されていて、物語としても強烈なメッセージを感じます。
\---鯨井勇一(JASMINE 総料理長)

超本格派、彗星のように現る!って感じ。これは、2020 年の No.1 に決定だね。
\---ホンマタカシ(写真家・映画監督)
※BRUTUS「みんなの映画」より抜粋。2020年に鑑賞。

解体されつつある薄暗い建物で作業中の男が瓦礫の中に見出した手紙をライターの光で読み上げるのにそっと寄り添う。大 河を泳いで行く男とその周りに悠然と広がる風景を何分間にも及ぶ長いトラベリングで追う。障害がある少年が祖母の誕生会で自分の居場所をゆっくりと見出して行くまでを、あるいはその祖母がこの世でないどこかに繋がっているような荒涼とした長い路地を漂っていく様をそっと見守る。グー・シャオガンのカメラは映し出すものたちへの敬意とともに、そうして時間と空間をたっぷりと、適切に用い、それらの繋がりをけたたましく崩壊しようとする響きと怒りへ、慎ましくも大いなる抵抗を示してみせる。
\---坂本安美(映画批評、アンスティチュ・フランセ日本映画プログラム主任)

山水画に着想を得たという横移動の長回しの絵巻の中に、中国映画の良識がすべて詰まっている。本当に信じられない。これがある若い映像作家のデビュー作だとは……。
この映画は、残る。
\---向井康介(脚本家)

絵巻は右から左に見る。観者の目の動きや鑑賞時間が転写され、画中、時が流れ事物は動く。逆に本編随一の印象的なスクロールは正に絵巻を巻き取るように左から右へなされ地勢や空間、幾層かの時間を写し取る。その時、風景自体が観者となり登場人物や私達までをもそこに落とし込む。静かで美しくありながら物凄まじい鑑賞体験をする事になる。
\---山口晃(画家)

中国に生きる、一人の素晴らしい映画作家に最大の敬意を表したい。変わりゆく社会を、家族という普遍から描いた傑作。一生に一本の映画になりました。
\---藤井道人(映画監督・脚本家)

春江水暖~しゅんこうすいだん
2021年2月11日(木・祝)Bunkamura ル・シネマほか全国順次公開
配給:ムヴィオラ
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