被災者の話 聞き伝えて 震災、原発事故10年 風化危惧 福島県生協連の佐藤氏講演

震災と原発事故から10年を前に福島の現状をオンラインで語る佐藤専務理事=長与町、ララコープ本部

 生活協同組合ララコープは9日、長崎県西彼長与町岡郷の本部で、東日本大震災・福島第1原発事故について学ぶ講演会を開いた。福島県生協連の佐藤一夫専務理事(66)が、震災と原発事故の発生から3月で10年を迎える被災地の現状をオンラインで語り、風化を防ぐために「被災者の話を周囲に伝えてほしい」と訴えた。
 ララコープは震災直後から、被災地に物資を送るなど支援活動を続けている。講演会は改めて現地の現状を知り、今後の支援について考えようと企画。職員ら約90人が参加した。
 佐藤さんは、昨年12月時点で約3万6千人の福島県民が県内外に避難していることや、放射線量が基準を上回る「帰還困難区域」がいまだ7市町村に残っていることを説明。被災地で人口減や少子高齢化が進み、医療や介護、防災などの担い手が不足しているとして「このままでは村や町は立ちゆかない。ふるさとの喪失という取り返しのつかない損失が目の前の現実になっている」と述べた。
 最近では震災と原発事故のことが人々の間で話題に上らなくなるなど「風化」が進んでいるとも指摘。「被災地からは『忘れないで』という声がたくさん聞かれる。被災した人から実際に話を聞き、感じたことを周囲の人たちに伝えていってほしい」と呼び掛けた。
 講演会に参加したララコープ職員の木谷和弘さん(56)は「改めて福島が抱える問題はたくさんあると感じた。発生から10年たつが、人ごととして捉えず、被災地に寄り添った効果的な支援を考えていきたい」と話した。

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