高校アスリートの春

 コロナ禍の中で迎える2度目の春。梅の爽やかな香りが漂い、いくらか寒さも緩みだす季節なのに、どうしても気持ちが晴れない、前向きになれないという人も少なくないのが現状▲高校スポーツ界も同様。昨年の春は高校生の涙の始まりでもあった。甲子園をはじめ、全競技の全国選抜大会が中止になった。努力の末につかんだ夢舞台の切符は、ただの紙切れになってしまった▲それから1年後の今、依然としてコロナが居座り続ける中、スポーツ界は前へ動きだした。現時点でボクシング以外の競技は全国選抜大会を実施する方針。23日には甲子園の組み合わせ抽選会も行われる▲当然、批判もある。全国出場を決めた学校に「この時期に他県に出る必要はない」「スポーツなんかいつでもやれるじゃないか」という匿名の電話も入っている。確かにそうかもしれない。でも…▲彼らにとって大事なのは「今」なのである。そのために、私生活から襟を正しながら、大会があると信じて日々を過ごしている。仲間たちと一緒に刹那を生きる10代のアスリートにとって、目の前の1試合は最後の全国になってしまうかもしれないのだ▲年を重ねてしまえば、二度と戻ることができない大切な季節。桜の開花とともに、彼らが気持ち良く躍動できることを願っている。(城)

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