昨年比3倍!クラウドファンディング型のふるさと納税も検討すべき?

2020年にふるさと納税をされた方も多いのではないでしょうか。
ふるさと納税は好きな地域を寄付で応援することができ、地域の特色あふれる品をお礼品として受け取れることも魅力ですが、もう一つメリットがあります。
それは「寄付者自身が寄付の使い道を指定できる」こと。

近年、さらに具体的な事業に寄付できる「クラウドファンディング型ふるさと納税」が注目されています。


ふるさと納税って何に使われているの?

ふるさと納税は、寄付をした後申請をすると寄付金のうち2,000円を超える部分について所得税や住民税の還付・控除を受けることができます。

通常、税金の使われ方について、納税者が指定をすることはできません。しかし、ふるさと納税では、寄付の際に「自身が支払った寄付をどのように使ってほしいか」を選択する事ができます。

指定できる使い道は自治体の抱える課題に応じて多種多様です。例えば山梨県韮崎市 では子育て支援センターや保育園の運営費などに活用される「ミライを担うこどもたちを応援しよう!」という使い道のほかに、10市町村で運営する「南アルプスユネスコエコパーク 」、市内のさくらの名所の保全活動などに活用されています。

もっと具体的な事業を支援する

その中で、「クラウドファンディング型ふるさと納税」という新しい形も注目されています。この制度の特徴は、自治体はより具体的な事業に対して、寄付を募ることができる点です。

自治体が設定する使い道では「こども・青少年の育成」「市内観光地の景観を守る」などの大まかなカテゴリを選択できるのに対し、クラウドファンディング型ふるさと納税では「市内の小中学校に電子黒板を設置する」「財政難に苦しむ村内の宇宙電波観測所の今後の運営のため」など、より明確になった使い道を指定して支援できます。

この場合、お礼品の有無は事業によって異なりますが、お礼品ありの場合、寄付者は自分の興味のある事業を寄付で支援できるだけでなく、その事業に関連したお礼品を受け取れる場合もあります。

そもそもクラウドファンディングって?

そもそも、「クラウドファンディング」は「群衆(クラウド)」と「資金調達(ファンディング)」が組み合わさった造語。インターネットを通して自分の夢や取り組みを発信し、その想いに共感した人や応援したいと思った人から資金を募る仕組みです。近年、商品開発や社会貢献性の高い課題の解決などに活用されています。

この「クラウドファンディング」をふるさと納税に活用することで、自治体はお礼品だけでなく、地域ならではの想いや取り組みを知ってもらうことができます。寄付者もまた、お礼品ではない切り口で地域を知り、応援したい自治体を見つける事ができます。

ふるさと納税というと、お礼品がきっかけとなり寄付先を決める方も多いと思いますが、
新たな寄付先の選び方として、近年事業数や寄付件数も増加傾向にあります。

昨年比3倍増

さとふるでは、クラウドファンディング型ふるさと納税は2020年11月末までで、昨対比約3倍の寄付が集まりました。寄付額全体に対する割合では2倍以上増加しています。
クラウドファンディング型への関心の高まりとともに、2020年の新型コロナウイルス感染拡大の影響により、多くの人が、応援や支援に関心、興味を持った結果なのではと推測しています。

例えばユニークなクラウドファンディング型ふるさと納税では、以下のような例があります。

【栃木県那須塩原 市】寄付募集中のクラウドファンディング事業(2021年2月時点)
那須塩原市「発」!コロナ下の観光を支援したい!
古くから観光地として親しまれている那須塩原市。新型コロナウイルス感染のリスクをできるだけ減らし、安全な観光地として、多くの人が訪れやすい環境づくりを目指す事業です。集まった寄付は、観光地で働く人たちのPCR検査費用などに充てられます。

入院中の子どもたちをクラウンが訪ねる事業も

【静岡静岡市】子ども患者たちの不安や悲しみを癒す!病院内テーマパーク化アートプロジェクト
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、入院中の子どもたちは家族の面会も難しくなり、心の拠り所が失われています。
そんな不安や寂しさを抱える子どもたちに、笑顔と癒しの時間を与えるため、ホスピタルクラウンのパフォーマンスを見せたり、病院内でヒーリングアートを楽しめるようにしたりすることを目指す事業です。

【福井県越前町】越前焼窯元を応援したい! コロナ禍乗り越え、伝統をつなぐ新しい力を!
日本遺産「日本六古窯」の一つである越前焼は、平安時代末期から約850年続く福井県越前町の伝統工芸の一つです。例年は「越前陶芸まつり」や「秋季陶芸祭」をはじめ多くのイベントに県内外から観光客が集まっていましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、焼き物を生業とする窯元の方々に深刻な影響が出ています。寄付は、寄付者へ送る越前焼の購入費用や、越前焼の元になる粘土の発掘調査などに活用されます。

そもそも、ふるさと納税でどれくらいの寄付が集まっている?


ふるさと納税は2007年に菅義偉総務相(当時)が創設を表明し、2008年に開始した制度です。初年度のふるさと納税の寄付額は約81億円でしたが、その後、寄付額は年々増加傾向にあります。

特に2015年にワンストップ特例制度 が開始され、手続きが簡略化されてからは寄付額が急増、2018年度の寄付額は2014年度の13倍以上となりました。2019年度は、地方税法の改正などがあり、寄付額が2018年度より減少しましたが、2020年度は再び寄付額が増加すると推測されています。

・ふるさと納税の受入額及び受入件数(全国計)

(出典:令和2年8月5日 総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果」)

「さとふる」でも2020年4月の寄付額が昨年同月比1.8倍以上となり、4月~11月の合計では昨年対比1.5倍となりました。また、2020年10月に「さとふる」が自治体に向けて実施したアンケートでは、回答した自治体の約半数が寄付額について「昨年対比150%以上」と回答しています。

コロナ禍で大きな影響

寄付やお礼品の傾向についても、回答した自治体の8割以上が新型コロナウイルスの影響が「あると思う」「ややあると思う」と回答しています。影響を感じた理由として「巣ごもりによる需要増加(45.1%)」や「体験型お礼品の需要減少(15.9%)」などが挙げられ、巣ごもり需要が2020年度のふるさと納税寄付額増加を後押となりそうです。

さとふる コロナ過におけるふるさと納税の変化 2020年 自治体・事業者アンケート

これまでの寄付使い道例は?

では、これまでふるさと納税は、どのような事業に使われてきたのでしょうか。特徴的なものを挙げます。

例えば北海道留萌市では、待機児童問題の改善や、地域ならではの学びの場の提供に活用されました。
小規模保育施設「すまい留」開設や、子どもたちの健やかな学びの場創出を目的とした寺子屋「るもいっ子」事業などを行っています。「るもいっ子」では夏にマリンスポ―ツ体験をしたり、冬にはかまくらに似た「イグルー」を作ったりと、勉学だけでなく、四季を楽しみながら子どもたちの成長機会を提供しています。

大阪府では、新型コロナウイルス感染症の最前線で活動する医療従事者の支援に活用されました。
「大阪府新型コロナウイルス助け合い基金」を立ち上げ、昨年5月から数回に分けて、集まった寄付を医療従事者などへ支援金を贈呈しています。

福岡県朝倉市では2017年以降、毎年のように豪雨被害を受けています。集まった寄付金は、農業関係の施設修繕費や水路を引く費用などの農地の災害復旧事業に充てられたほか、地域コミュニティ活動などに活用されました。

人口減少や、突如発生した災害などにより、市税だけでは地域の魅力を向上し、住民満足度を高める施策に使えるほどの財源を持たない自治体も少なくありません。
ふるさと納税制度によって得た財源を、住民満足度の向上のための施策やシティプロモーション、移住者の誘致など、未来に向けた投資を行うことでまちに人が集まり、経済が潤うというよい循環が生まれる可能性が高まっていると考えられます。

令和2年7月豪雨 被災時の様子

2020年は新型コロナウイルスの影響で、旅行や外食の制限など、私たちの暮らしに大きな影響があっただけでなく、全国各地で飲食業や旅行業を営んでいる方々や、そこに丹精込めて育てた食材を卸している生産者の方々から地域の伝統工芸などを守る方々まで、様々な方が影響を受けました。

2021年も新型コロナの影響で、引き続き生活に様々な制限が及ばされることが推測されます。ふるさと納税で「支援したい!」と思える事業を探してみてはいかがでしょうか。

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