今週引退の蛯名正義騎手が明かすサンタクロース調教の思い出

サンタクロースのコスプレで調教をつけた2001年の有馬記念は思い出に残っているなあ

【特別公開!エビショウの“独舌”講座】先週はクインズセージ(日曜小倉2R・3歳未勝利)で2021年の初勝利を挙げることができました。ゲート内ではややうるさくて、スタートのタイミングはギリギリだったんだけど、道中の手応えは抜群。最後もいい脚を使ってくれたね。まだまだ良化の余地を残しているように感じたし、心身のバランスが整えば、さらにいい走りができるんじゃないかな。

メインのGⅢ小倉大賞典ではデンコウアンジュに騎乗して5着。広いコースならともかく、小回りで外を回しても…と思い、勝負どころではあえて内へ。直線ではいい脚を使ってくれて、一瞬は夢を見れたんだけどね。最後はステッキを叩き過ぎて制裁(戒告)を受けてしまって…。まあ、それだけ本気だったってことで(苦笑)。結果はともかく、悔いは残っていないし、納得の競馬ができました。改めてチャンスをくださったオーナー、調教師、厩舎スタッフ…それからいつも頑張ってくれているデンコウアンジュにも感謝申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。

さて今週は土日とも中山。泣いても笑っても、いよいよ最後の騎乗となります。引退する実感? いや~正直、まだそういう感覚はないんだよね。普段通り調教に乗って、競馬場に向かうわけだから。きっと来週以降、今までやっていたことをやらなくなった時に、そんな実感が湧くのかなって思ってる。

中山競馬場の思い出といえば、とにかく、たくさん大きなレースを勝たせてもらったよね。大穴で勝ったマツリダゴッホの有馬記念をはじめ、イスラボニータやディーマジェスティの皐月賞。トロットスターのスプリンターズSやドリームジャーニーの朝日杯FSも忘れられない。

そんな中でも楽しい思い出として残っているのはマンハッタンカフェで勝った2001年の有馬記念。レースはもちろんだけど、それ以上に覚えているのが週中のトレセンでのコスプレ。その年の有馬記念がクリスマスに近かったから、何か面白い話題を…ということで、勝ちゃん(田中勝春)や洋司(郷原元騎手)、良太(小島助手)たちと皆でサンタクロースの格好をして小島太厩舎の馬の調教をつけたんだ。ゲリラ的に行ったものだから、一部からはお叱りも受けたんだけど、おおむね評判は良かった(笑い)。おまけに有馬記念もビシッと勝つことができて、本当に気持ちが良かったなぁ。

中山はトリッキーなコースが多くて、そこも好きだったね。ごまかしの利きづらい東京と違って、中山はジョッキーの判断ひとつで、馬の能力差を埋められることもあったからね。そういうことを考えるのが楽しかったし、作戦がうまくいった時は本当に爽快だった。

そんな舞台で迎えるGⅡ中山記念。自分はゴーフォザサミットとのコンビでラスト騎乗に臨みます。近走は勝利から遠ざかっているものの、前走(アルデバランS15着)は長期休養明けのうえに、初ダートで結果が出なかったもの。追い切りの感触から状態は決して悪くないし、実績のある芝に戻るのもプラスでしょう。舞台は中山の1800メートル。なんとかうまいこと立ち回って、ひとつでも上の着順を目指せたらと思っています。

あ、そうそう。JRAの計らいで、ありがたいことに最終レース終了後には引退式も開いてもらえることになりました。その模様はテレビ中継のほか、JRA公式ユーチューブでもライブ配信されるそう。できれば競馬場で直接ファンの皆さんに感謝の言葉を伝えたかったけど、ぜひテレビやパソコン、スマホの前で見届けてもらえれば。よろしくお願いします。

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