【新型コロナ】緊急宣言再び延長へ 我慢の日々「経営危うくなる」

多くの人が行き交う仲見世通りの繁華街=4日午後6時15分ごろ、川崎市川崎区

 再び延長される見通しとなった1都3県の新型コロナウイルス緊急事態宣言。菅義偉首相の表明から一夜明けた4日、神奈川県内に落胆ムードが広がった。多くの人でにぎわう街の様子に「仕方ない」「やっぱり」との受け止めがある一方、さらに2週間程度続く「我慢の日々」にため息が漏れる。歓送迎会や花見シーズンに好転する兆しも見えず、事業者の声は切実だ。「仕事のモチベーションが保てない」

 「解除できないと思っていた。人通りは多く、昨春の宣言時のように緊張感がない。みんなコロナに慣れてしまっているよう」

 店は宣言再発令時から休業していたが、「1日6万円の協力金がいつ支払われるか分からず、時短でも収入を得ないと厳しい」と4日に営業を再開した。ただ、宣言が解除されても客が戻るかどうか不安は尽きず、「残り2週間で感染者が減ってほしい」と無人の店内で祈るように話した。

 宣言延長の影響は飲食店にとどまらない。1959年創業の「ひさまつ花店」副社長で川崎銀柳街商業協同組合副理事長の金長(きんちょう)敏夫さん(67)は、「飲食店が休みになってしまうと、不況は全体に連鎖してしまう」と表情を曇らせる。

 市内のホテルや飲食店などに花を卸しているが、宴会などのキャンセルで1~2月の売り上げは前年比30%減少した。卒業や送別会などで年間売り上げの3割を占める3~4月の需要も見通せず、「2週間後に解除されないと、経営が危うくなる」。

 市内外の居酒屋やバーなどに酒類を納入する卸売業久保田酒店(同市川崎区)も1、2月の売り上げが前年比約70%落ち込んだ。政府は休業や時短要請に応じた飲食店の取引先にも最大60万円の一時金を支給予定だが、同社管理業務部の男性部長(61)は「額としても足りない印象で、いつ入ってくるのか」と支援拡充を訴える。

 「送別会はおろか、会社で会うことさえままならない」と話すのは、横浜市磯子区の男性会社員(31)。在宅勤務が主で週2回の出社も定時に帰宅できるが、今春には地方へ転勤し数年後に定年を迎える上司に感謝を伝える機会もない。「とても大切なこと」がかなわない状況に声を落とす。

 同市神奈川区の女性会社員(32)も「延長されても日常は変わらない」とするが、昨年2月に結婚した大阪勤務の夫(33)と会えないのはつらい。「経済的な切実さではないけど、幸せが削られている気がする。せめて一緒に桜を見たい」

© 株式会社神奈川新聞社