諫早の未来 市長選政策を読む<5>新型コロナ対策 大久保氏「円滑にワクチン接種」 山村氏「現場の声聞き迅速に」 宮本氏「地域経済を立て直す」

コロナ対策

 過去に例がない事態が続く新型コロナウイルス感染。全国への緊急事態宣言が発表された昨年4月、市議会がいち早く、緊急経済対策などを市に提言。それまで市は、他の市町の状況を見定め、対策を考えるという姿勢だったが、大型連休前の4月末、全業種を対象にした30万円の給付金支給や融資制度の創設に踏み切った。
 その後も、市議会の相次ぐ提言に後押しされ、市は観光・交通・宿泊事業者向けの追加給付金や発行総額約26億円、41万冊の地域振興商品券の発行を決めた。「他の市町の支援策が先行して、スピード感に欠ける」「給付金の対象業種の多さや商品券のプレミアム率(30%)は他を上回っている」-。市民の評価と不満が混在する。
 商品券の発行が始まった昨年7月中旬、市内で感染が拡大。消費喚起どころか、感染におびえ、飲食店街の灯は消えた。1冊6500円分を5千円で販売した商品券だったが、年金生活者や低所得層にはハードルが高く映った。「5千円でも購入できない。発行事業費にかける予算を少しでも給付してもらったほうが助かる」。それゆえか、販売期限の9月末までに完売せず、12月末まで残りを追加で販売した。
 この間、市内のコロナ感染に関する情報提供への不安も募った。県立保健所の管轄のため、市は詳細な情報を持ち得ない。市は感染者が確認されると、県の発表資料を市ホームページなどに掲載。それでも「市長の顔が見えない」との声が相次ぎ、広報誌や会員制交流サイト(SNS)での動画配信を通し、感染予防策などを発信し始めた。
 「コロナ禍で落ち込んだ地域経済を立て直す」。現職の宮本明雄氏(72)は4選出馬理由にコロナ禍と南諫早産業団地などの大型事業の遅れを挙げた。企業誘致や新年度以降の税収減など先行きが不透明な中、堅実な財政運営を続けてきた手腕に期待が寄せられる。
 市民の不満を感じ取り、出馬に踏み切ったのが、新人で元県議の大久保潔重(ゆきしげ)氏(54)。感染者が発生した職場などでの無料PCR検査をはじめ、ワクチン接種の円滑な運用を掲げる。「ここでしっかり手だてをして、感染症に強い町にするのが責務」
 「コロナ対策は危機管理」と言うのは、新人で元国土交通省職員の山村健志(つよし)氏(47)。市民や企業、医療・福祉現場などの声を聞いた上で、迅速に政策を実行する仕組みづくりを目指す。「官民一体で臨機応変に対応する態勢こそ、市民の安全、安心につながる」
 2月に入り、他自治体がワクチン接種に向けた相談窓口を設置する一方、同市の準備状況が「見えない」という声が再び上がる。すべて整ってから公表するのが従来の市のスタンスだが、未知の事態だからこそ、途中経過でも情報公開が安心につながる。新型コロナ対策が市の情報発信への姿勢をあらためて浮かび上がらせたともいえる。


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