東日本大震災遺構を紙芝居で語り継ぐ 長崎の被爆者、末永さん

被災地で撮影した写真で作った紙芝居を前に「ずっと忘れない」と語る末永さん=長崎市内

 紙芝居などで平和の大切さを伝えている長崎市の被爆者、末永浩さん(85)は、被爆遺構巡りのガイドを務めてきた経験から、東日本大震災の震災遺構保存に特別な思いを寄せている。「目から消え去るものは、心からも消え去る」。震災から10年となる11日を前に、震災遺構の写真を使った紙芝居を手に、継承への思いを新たにしている。
 震災当時、末永さんは非政府組織(NGO)「ピースボート」の旅で世界を巡っていた。海外メディアが伝える津波被害の様子に「大変なことが起きた」と衝撃を受けた。
 2012年以降3回、被災地を訪問した。児童や教職員が犠牲になった宮城県石巻市立門脇小、岩手県宮古市田老地区の壊れた堤防、津波の被害を受けたホテル、同県陸前高田市の松の木などを撮影。「被害のすさまじさが伝わった。遺構の大切さを強く感じた」と振り返る。被爆の実相を物語る長崎の被爆遺構を残していきたいという強い思いとも重なったという。
 末永さんは年月の経過に伴い、関心が薄れていくことを懸念。「東北以外で暮らす自分たちも何かしらの問題意識を持ち続けたい。機会があれば紙芝居を通して、長崎から語り継いでいきたい」と話している。

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