2005年に名古屋で結成されたヒップホップ・ユニットの8thオリジナル・アルバム。現在は週間TOP10入りしつつも人気がコアファンに集中しているが、作品自体は『好きだよ。～100回の後悔～』など着うた大ヒットの2010年前後よりも随分と成長している。
まず、歌詞が特徴的。これまでも、いち早く「LINE既読」を取り入れて注目された彼らだが、本作でも「マスク」「感染拡大中」などタイムリーだし、タイトル曲『80億分の1』も早々に世界人口を意識している。
また『大切な人へ』は、伴侶となった数年後の葛藤がリアルだし、お気楽なパーティー・ソング風の『大本命』さえも、相手との一体感や責任感が感じられる。ko-daiの声はより深く優しく、eyeronの声はより力強く、そしてトラックメーカーのmattyの盛り上げ方がよりドラマティックになったことも加わり、作品全体に深みが増している。
さらに、サビ頭のキャッチーなメロディーが耳に残りやすい。特に、苦しいほどに相手を想う『好き』は、そのままSNSに載せて告白したい人もいそうだ。言葉に説得力があるのもアラフォーになった強みだろう。『もう直接言うことはできないから、こうして歌にして届けようとしてる。』も別れを経験しつつ、前に進まねばならない渦中にいる人たちの心の支えとなりそうだ。
DVDにはLIVE関連の映像やドッキリ企画を40分近く収録。本作を聴けば、人生で大きな夢を叶えてから、または大きな別れを迎えてから、その数年後をどのように生きれば良いか参考になるはず。
（ワーナー・CD+DVD初回限定盤A 4000円＋税）＝臼井孝
