【高校野球】藤浪ら撃破した公立の名将が10年ぶり聖地へ 21世紀枠・東播磨が狙う“大物食い”

東播磨・福村順一監督【写真:荒川祐史】

加古川北では春夏2度の甲子園出場を果たした福村順一監督

「どうやって戦っていきましょうか。個々の能力では相手に分があるのは明確ですから。でも無策ではいきませんよ」

21世紀枠で春夏通じて初の甲子園出場を果たす東播磨(兵庫)の初戦の相手は九州大会4強の明豊(大分)に決まった。2週間後に迫った“初陣”に向け福村順一監督は頭の中で様々なシミュレーションを行っていた。

福村監督は加古川北で指揮を執った2008年夏、ベスト8入りした2011年春と2度の甲子園に出場を果たしている。常に先の塁を狙う隙のない走塁、打撃だけでなく足を使った攻め続ける野球で“加古北旋風”を巻き起こしたのは記憶に新しい。

当時のチームとは戦力も違うが福村野球の根底にあるものは変わらない。昨秋の公式戦全10試合では24盗塁をマークした。「昔も今もそうですが、相手を見ても仕方ない。情報に振り回されることなく、自分たちの野球をやり切れることができるかどうか。東播磨の選手も当時の(加古川北)選手に持ってないものを持ってます。動かず負けるな、まずはトライしろと」。

2010年秋の近畿大会では1年生だった藤浪晋太郎(現阪神)を擁する大阪桐蔭に2-0で勝利すると、翌11年春の選抜では初戦で最速152キロ右腕・釜田佳直(現楽天)を擁する金沢、2回戦でも剛腕・松田遼馬(元阪神・ソフトバンク)を擁する波佐見を撃破している。

超攻撃型野球でチームの甲子園初出場初勝利を目指す【写真:荒川祐史】

「どこにも負けないものを身に着けることが自信につながっていく」

「手を出す、出さないボールを徹底していた。そして相手の隙を見逃さない。シンプルなことですが、それが出来るかできないか。高校野球に“絶対”はない。そこが面白いところでもありますよね」

下馬評では圧倒的不利とされる状況にも動じない。自チームには150キロを投げる投手やプロ注目の野手はいない。強豪私学を破る術は「それしかなかった」と振り返るが「チームの特徴を選手たちに伝える。一つのことをやりぬくことで、どこにも負けないものを身に着けることが自信につながっていく」と胸を張る。

だからこそ、試合中には「基本的に(自由に走っていいサイン)グリーンライトです」と、盗塁は選手たちの自己判断に任せている。東播磨の命運を握っているエース右腕・鈴木悠仁投手も「自分たちの野球をすれば勝てる。明豊さんは強いのは分かっていますが、相手うんぬんじゃない。負けるのは嫌いなので勝つイメージしか持っていません」と、はっきりと口にする。

甲子園では勝ち負けの他にも、今夏も見据えたインパクトを残すつもりだ。

「雷のように素早く、そして強い。今年のテーマはチームカラーも含めた“紫風迅雷”。走塁のコツは伝えているので、あとは覚悟を持ってやれるかどうか。選手たちには甲子園を堪能させてあげたい」

10年ぶりの甲子園に挑む公立の名将が超攻撃型野球でチームの甲子園初出場初勝利を目指していく。

【動画】センバツ出場・東播磨 堅守の秘密「高速ノック」

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(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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