「自主性求め 全国で結果」活水学院3月末で退職 中高吹奏楽部指導 藤重佳久さん 新天地・大村を音楽の街に

「生徒の自主性が全国大会出場につながった」と6年間を振り返る藤重さん=長崎新聞社

 2015年に活水学院(長崎市)吹奏楽団総監督に就任、無名だった活水中・高吹奏楽部を全国トップレベルの強豪校に育てた活水女子大特任教授の藤重佳久さん(66)が、今月末で同学院を退職する。就任1年目で同部を初の全日本吹楽コンクール出場に導き、全日本マーチングコンテストには17年から3年連続出場を果たした。新年度からは、大村市の部活動指導員(非常勤)として市内の5中学校などで指揮棒を握る。思い出や新天地での抱負などを聞いた。

 -6年間を振り返って。
 初心者が多くゼロからのスタートだった。「音楽の伝道師」と称して、前任地の精華女子高(福岡市)で培った指導経験を生かした。「認める、褒める、励ます」を心掛け、生徒たちが自主的に活動できるようになることを求めた。すぐに生徒一人一人にリーダーシップが芽生え、いきいきと演奏するようになった。心から音楽を好きになってくれた。その結果が、全国大会出場につながった。私も活水で成長させてもらった。学校関係者、生徒、保護者らに感謝したい。

 -印象に残っている出来事は。
 19年の九州吹奏楽コンクール。活水がトップバッターだった。最初に出演した団体の演奏が、その後に出演する団体の審査基準にもなってくるので、とてもやりにくかった。心配だったが、生徒たちは見事に全国大会出場を決めてくれた。うれしかった。

 -新型コロナウイルス禍で苦悩した。
 聴衆と演者が一つの空間で作品(演奏)を共有するのが吹奏楽であり、音楽。それがコロナで制限され、コンクールも中止になった。その中でオンラインは有効だった。一堂に集まって練習ができなくても、LINE(ライン、無料通信アプリ)などを使って指導できたので、モチベーションはどうにか維持できた。ただ、オンラインでは演奏の生の空気が伝わらず、感動を味わえないのが欠点。

 -長崎県の吹奏楽について思うことは。
 長崎は教育熱心な県だが、演奏を聴くという文化がまだ根付いていないのではないか。このため、マーチングやジャズのフェスティバルなどを県内で開催し、演奏者と地域の人たちが交流できる場をつくってきた。徐々にではあるが、多くの人たちに喜んでもらえるようになってきた。継続しなければならない。

 -大村市での抱負。
 大村を音楽の街にしたい。例えば、市内の若い音楽家たちを集め、「ヤングミュージックフェスティバル」を開きたい。大村が拠点の「長崎OMURA室内合奏団」とも連携を図る。主に中学生の指導に当たるが、小学生の育成にも力を入れたい。

【略歴】ふじしげ・よしひさ 1954年、福岡県久留米市生まれ。武蔵野音楽大卒。音楽教諭として勤めた精華女子高(福岡市)吹奏楽部の顧問として、同部を全日本吹奏楽コンクール金賞10回、全日本マーチングコンテスト16回出場(すべて金賞)の強豪に育てた。定年退職後の2015年から現職。活水中・高吹奏楽部は19年、同コンクールと同コンテストに県勢初のダブル出場を実現、同コンテストで2年連続の金賞受賞を果たした。


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