検証・佐世保市政 朝長市長4期目折り返し〈上〉 新型コロナ対策 収束後に“傾倒” 不満も

ポストコロナを見据える佐世保市の朝長市長。同市の佐世保市総合医療センターは県北医療の要となっている

 「新型コロナワクチンの接種で年度後半から本格的に景気は回復していく。ポストコロナの新しい社会を目指す」
 2月に佐世保市役所で開かれた記者会見。市長の朝長則男(72)は、2021年度の一般会計当初予算案を発表し、市政運営の基本的方針を語った。
 予算配分は、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致などの重点施策「リーディングプロジェクト」に加え、庁内業務のデジタル化など新型コロナウイルス感染症の収束後を見据えた事業を優先。しかし、同時に発表した20年度の補正予算案も含め、コロナ禍で疲弊する地域経済を支援する独自の経済対策は見当たらなかった。
 一方、長崎県は苦境にある観光産業を応援するため、県内を旅行する県民の宿泊料金を割り引くキャンペーンなどを企画。長崎市も商店街活性化や農業振興策などを独自に盛り込んだ。
 ポストコロナに“傾倒”しているようにも映る朝長の方針には、地元経済界から不満が漏れ聞こえる。ある経営者は「県に頼っているだけでアイデアに乏しいように感じる。地域経済の実態が分かっているのだろうか」と嘆く。
 こうした意見に対し、朝長は「県と二重の経済対策を講じても効果は薄まる。役割分担が重要だ」と理解を求める。当面は国や県の支援策を活用するよう呼び掛ける考えを示し、「コロナが収束すれば全国で一斉に景気回復に向けた競争が始まる。限られた予算を温存し、すぐに“弾”を撃てるよう準備する」と強調。収束の兆しが見えれば、年度後半の補正予算に独自の支援策を盛り込む考えを示す。
 新型コロナの感染防止対策では、「国がワクチン接種などを主導しており、地方自治体にできることは限られている中でよくやっている」と、市議会や経済界では一定評価されている。ただ、一部からは「ほかの首長と比べて会見などで顔を見る機会が少ない。リーダーとしてのメッセージが弱いのではないか」と物足りなさを感じる声もある。
 市内では今月に入り複数のクラスター(感染者集団)が確認されるなど、感染者が再び増加しており、市担当者は「第4波の入り口にいる」と警戒感を強める。十分な感染防止の態勢を整えながら、疲弊した地域経済を建て直すことはできるのか-。朝長市政の新型コロナ対策の成否が問われるのは、これからだ。
=文中敬称略=


 佐世保市の朝長則男市長は今月29日に4期目の折り返しを迎える。同市では新型コロナ対策のほか、人口減少問題、IR誘致といった重要な課題が横たわる。朝長市政の現状を検証する。

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