コロナ変異株にも効く中和抗体、10日で作る技術を広島大学と京都大学が開発

広島大学大学院の保田朋波流教授らと京都大学の共同研究グループは、広島県の庄原赤十字病院および県立広島病院と共同で、複数種類の新型コロナウイルス変異株に結合してウイルスを無力化する完全ヒト抗体を10日間で人工的に作り出す技術を新たに開発した。

ウイルスに結合して無力化する抗体は中和抗体と呼ばれ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の特効薬として期待されている。新型コロナウイルス感染者の血液からウイルスに結合する抗体遺伝子を取り出し、人工的に抗体を作り出す技術はこれまでにも報告されている。しかし、高い中和活性のある抗体の取得には、多数の血液検体から候補となる抗体を作成し選び出すために時間と労力を要した。

研究グループは、新型コロナウイルスに感染後2週間以上経過し、高い中和活性を示した重症患者の血液検体を優先的に選び、新型コロナウイルスに結合するヒトIgG抗体(免疫グロブリン)を人工的に作成。その抗体から従来の新型コロナウイルス(武漢型)に強く結合する32種類の抗体を選び出して解析した結果、そのうち97%の抗体は英国変異株(N501Y変異)にも強く結合し、63%は多重変異を有する南アフリカ変異株(K417N/E484K/N501Y変異)にも結合することが明らかとなった。

今回、目的とする抗体を保有する患者の特徴を明らかにし、作業工程を工夫して、数名の患者から高性能な中和抗体を10日間で取得。多重変異株にも結合する中和抗体の取得成功は国内で初めてとなる。

今後、取得した中和抗体の早期の医薬品化と、インド変異株などの新たな多重変異ウイルスに対する中和抗体の取得を目指す。今回の技術により、感染者の死亡率低下や感染の封じ込めにつながることが期待される。

参考:

【広島大学】新型コロナウイルス変異株を無力化する中和抗体を10日間で作成する技術を国内で初めて開発~新たな変異ウイルスの拡大に備えた抗体医薬へ期待~(PDF)

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