長崎新聞は県内21市町に、新型コロナウイルスワクチン接種会場で予約キャンセルにより余った場合の対応を尋ねた。多くの市町が未接種者の待機リストを活用する一方、優先順位は一様でなく、指針を示すよう国に求める声も。首長に優先接種する市町はなかった。希少なワクチンを無駄にしないよう現場は模索を続けている。
ファイザー製ワクチンは解凍後5日以内に使い切らなければならない。県内では医療従事者の優先接種と平行し、高齢者対象の個別接種や集団接種が順次始まっており、うち個別接種は「医療機関の裁量に委ねる」との回答が目立った。
24日から85歳以上の個別接種が始まる長崎市。余剰が出た際は(1)翌日以降の予約者(2)救急隊員や保健師ら医療従事者-の順で提供する。(2)は市が事前にリスト化。医療機関から「余る」と連絡があれば、登録者に伝えマッチングする。さらに(3)として、医療機関近隣の事業所にも協力を求める方向で調整している。
接種を担う市内医療機関数は280に上る。市担当者は「職員の事務負担は大きいが、多くの市民が求めるワクチンを廃棄するわけにはいかず、無駄にしない仕組みが欠かせない」とする。
佐世保市は25日に個別接種をスタート。26日からの集団接種で余った分は保育所や幼稚園の職員に充てる方針。朝長則男市長は定例会見で「子どもと接し、3密を防ぐのが難しい」と理由を述べた。
諫早市は高齢者に接する機会が多い市職員に接種。今後は老人クラブ連合会を通じて募る。平戸市は待機リストを医療機関に配布。代役が見つからなければ入院患者にも認める。
大村市はすぐ接種できる75歳以上のリストを作成。登録自由で20日現在13人が手を挙げている。これまで6人に接種した。市担当者は「付き添いの家族にも打てればスムーズにいく。国が明確な『OK』を出してくれれば」と望む。こうした国の「自治体任せ」を疑問視し、具体的な指針を求める意見は複数の市町から聞かれた。
雲仙、南島原、壱岐、西彼時津、東彼波佐見の各市町は、高齢者や医療従事者らに提供。ある担当者は「県による優先接種が遅れており、医療従事者の希望が多い」という。新上五島、北松小値賀、佐々の各町は高齢者を優先。ただ佐々町担当者は「明確な順番を決めておらず、穴埋めに苦慮している」と明かす。西海市は「急に別の人は呼べない」と会場にいる医療従事者を対象とする。
五島市は2次離島会場で余った10人分をその場にいた市職員や予約していない住民に回した。長与町は会場の従事者に年長者順で接種している。対馬市は「不特定多数と関わる」として警察官にも接種させた。
「これから」という自治体も。島原市は年齢の高い順にリスト作成を検討。来月から個別接種を始める松浦市は「接種順などルールを検討する」としている。
全国では高齢者に先駆けて接種した首長に賛否の声が上がった。県内の高齢首長らは住民と同じ手続きを取り、知事や対象外の首長は接種していない。長崎市は、多くの人と接する田上富久市長(64)の優先接種を危機管理の面からも検討したが、「今のところ予定はない」。
佐々町の古庄剛町長(74)は予約後、余剰が出て接種した。川棚町の山口文夫町長(74)は「町民に安心感を」と集団接種の高齢者枠で最初に接種を受けたが、東彼杵町の岡田伊一郎町長(67)は65歳以上の希望者全員を待ち「最後に打つ」。集団接種の地区順を抽選で決めた際に「命に関わることなのに」と不満が出たため「自分が先に打つわけにはいかない」と話した。