ドラフト候補 最速150キロ左腕 隅田知一郎(波佐見高-西日本工大) 覚悟決め、さらなる進化へ

150キロ左腕としてプロが注目する西日本工大の隅田=県営ビッグNスタジアム

 最速150キロ左腕としてプロが注目する長崎県出身の大学生投手がいる。4年前の夏、波佐見高のエース格で甲子園に出場した隅田知一郎。西日本工大に進み、大きく成長を遂げた。現在、九州地区大学選手権北部九州ブロック大会1部で奮闘中の4年生は「ドラフト候補と言われるのはありがたいけれど、それを確信にしたい。目標は神宮出場」と意気込む。
 身長177センチ、体重76キロ。投手として恵まれた体格とまでは言い難いが、人一倍の努力で道を切り開いてきた。
 波佐見高入学当時、身長162センチで体重は50キロ足らず。直球は120キロも出なかった。そんな細身の投手を、得永健監督は1年秋の県大会から起用した。安定感を評価されて、2年秋の県大会も先発で登板。だが、その後に左肘を疲労骨折して、3年春の県大会は投げられなかった。
 この苦しかった期間が逆に成長を促した。リハビリを経て重ねたトレーニング。下半身と体幹、インナーマッスルを鍛えてパワーがつき、夏の甲子園で143キロをマークした。
 ただ、試合は1点リードの九回に追いつかれて降板。救援が打たれてサヨナラ負けした。たどり着いた夢舞台は「不完全燃焼」に終わった。
 得永監督から「頑張ればプロにも行ける」と送り出された西日本工大では、豊富な練習量と実戦に加えて、早朝の10キロの走り込みなどで技術、体力を高めた。高校時代からの同級生、村川大介をはじめ、チームメートの存在も心強かった。1年春からベンチ入りし、3年秋に150キロを記録。ドラフトの上位候補に躍り出た。
 ゆったりとしたスリークオーターのフォームから、キレのある直球、チェンジアップ、スライダー、カットボール、ツーシーム、フォークを投げ込む。「どの球種もウイニングショットにできる」と胸を張るように、3年秋までのリーグ戦は通算116回2/3の投球回数を上回る144三振を奪っている。
 今月17日、長崎市のビッグNスタジアムで行われた久留米工大戦に先発。プロのスカウトも見守る中、6回1安打無失点と抜群の安定感を披露した。あるスカウトは「九州の大学生の左腕では一番」と高く評価。武田啓監督も「これまで指導してきた選手の中でトップの素材」と期待する。
 同じ左腕でプロで活躍している大野雄大(中日)、今永昇太(DeNA)らの動画をチェック。学業の方も卒業に必要な単位はほぼ取得済みで、野球に打ち込む環境を整えた。進路はプロ一本。「ドラフトにかかることではなく、先で活躍できるかが大事。そのためにも、この1年、徹底的にやり抜く」。覚悟を決め、さらなる進化を誓う。

 【略歴】すみだ・ちひろ 西大村小2年時に軟式野球を始め、西大村中から波佐見高に進学。3年時に左右二枚看板の一角として、チーム16年ぶりの夏の甲子園出場に貢献した。西日本工大では1年春のリーグ戦から登板し、2年春の近大産業理工学部戦で完封するなど活躍。通算成績は31試合登板、10勝4敗(4月25日現在)。左投げ左打ち。177センチ、76キロ。21歳。

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