ミス・ユニバース世界大会で民主化訴えた! ミャンマー代表が決死の渡米

【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】“美のオリンピック”ミス・ユニバース世界大会で、ミャンマー代表が自国の窮状を訴えた。

この世界的ミスコンは昨年、地球規模の新型コロナ禍で1年延期された。しかし予選が行えない国、渡航制限で参加できない代表、感染を危惧し辞退する代表が相次ぐなど大混乱のなか、16日、米フロリダ州のリゾートホテルで決勝が開催された。

74か国の代表から、水着審査などの予選でトップ21が絞られた。そこに残ったミャンマー代表トゥザル・ウィン・ルウィンさん(22)は、民族衣装をまとい「ミャンマーに祈りを」と書かれたプラカードを掲げた。言うまでもなく自国を騒乱に陥れ、市民を無差別虐殺している国軍に対する抗議と、国際社会のサポートを訴えるものだ。

トゥザルさんは最大都市ヤンゴンに生まれ、東ヤンゴン大学で英語を学んだ。ミス・ユニバース公式サイトによると、T170・B86・W61・H89の8頭身美女。エキゾチックな笑顔が印象的で、地元ではモデルとして活動している。

だが今年の2月1日、ミャンマー国軍がクーデターを起こし、民主政府を転覆させたことで生活は一変。暴力による統治を強引に進めようとする軍に対し国民は立ち上がり、各地でデモを行ったが、トゥザルさんもその中にいた。

フェイスブックやインスタグラムでもクーデターに反対する声を上げ、家族が軍に殺され生活に困窮している人々への寄付を続けてきた。同じように民主化を求めて活動していた著名人が次々と逮捕されるなか、“次は自分ではないか”と不安を感じながら、世界大会に参加するため渡米したという。

出国時のヤンゴン空港で逮捕されるのではという懸念もあったようだが、なんとか今月7日、フロリダに到着。だが、決勝大会で着るために用意していた衣装はなくなっていた。真相は不明だが、SNSでは「ヤンゴン空港は軍の管理下。出発時に軍が嫌がらせで荷物を奪ったのでは」という臆測も流れている。

途方に暮れるトゥザルさんを助けたのは米在住の同胞たちで、ミャンマーの少数民族チン族の衣装を提供。決勝にこそ進めなかったが、その優美ないでたちで「ベスト民族衣装賞」に輝いた。トゥザルさんは「私たちは死にかけています。毎日、軍に撃たれています」などと話し、それでも民主化のため戦い続けると誓った。(室橋裕和)

☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「バンコクドリーム『Gダイアリー』編集部青春記」(イースト・プレス)。

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