つみたてNISA、iDeCoの次を知りたい!「投資金額」を増やすのにベストは方法は?

2019年12月のNISA口座数(一般・つみたて)は1,363万口座。2020年12月には1,523万口座を超える伸びとなっています。この1年、コロナ禍において株高になっていることや、レジャーなどの機会も減り自宅にいる時間が増えたことも、多くの方が株式に興味をもつ要因になっているのではないでしょうか。

「投資をはじめるなら、まずはつみたてNISAから。老後資金をつくりたいなら、iDeCoなど確定拠出年金の枠を利用しながら投資信託を買おう」という話はよく耳にすると思います。

今回はその一歩先、「投資金額の増やし方」について一緒に考えていきましょう。


投資で意識したいリスクとコスト

投資商品には、つみたてNISAやiDeCoで投資できる投資信託の他に、個別株、ETF、債券、CFD、コモディティ、先物取引、暗号資産などさまざまあります。「この上昇相場の中で、もっと儲けたい」と、他に良い投資対象はないかなと考えることは悪いことではありません。

しかし、資産運用を成功させる為に、共通して絶対に考えなくていけないことがあります。一つはリスクコントロール、もう一つはコストコントロールです。

リスクコントロールの王道を知る

投資は所有する金融資産の価格が揺れ動きます。ランダムに揺れ動く触れ幅と不確実性のことをリスクといいますが、リターンが大きければリスクも大きくなる傾向にあります。長期で15年以上主要なインデックスに投資していれば、経済成長(人口増や生産性の向上)に伴ってリスクは限定される一方、資産は増えている可能性が極めて高くなります。しかし、短期で見ると上がるか下がるかはわかりません。

この不確実性に、感情の生き物である私達は振り回されます。そして、株価が上がって高くなっている時は「私もこの上昇の分け前に与りたい」と買いたくなり、株価が下がっている時には「これ以上株価が下がる前に、逃げたい。売りたい」となります。これは、「目の前に車が来たから逃げよう」とか「寒いから暖かくしたい」というのと同じような危機回避の本能です。

この危機回避の本能は、とっているリスクの大きさによっても感じ方が変わります。

1億円資産を持っている人が、100万円投資して、50万円に減ってもそれほど痛手ではありませんし、100万円が総資産の人が50万円に減ったら人生が詰んだかのような衝撃を受けるかもしれません。

そこで、考えてほしいリスクコントロールの王道が、現金の確保と、長期・分散・積み立てです。

現金で6ヶ月以上の生活費を確保しておく

現金の確保とは、万が一働けなくなったりしても、しばらく食いつないでいける「生活防衛費」とも言える金額を確保することです。目安としては6ヶ月分の生活費、個人事業主の方は1年から2年分の生活費を貯めると良いでしょう。

現金がしっかり有るのか無いのかによって投資による資産の増減のインパクトは変わります。もし、なけなしのお金のすべてが増減したとしたら、どんなにタフな精神の持ち主でもこたえてしまいます。

長期分散積立を意識する

先述のとおり、長期で資産を運用することで、資産は増えていく傾向にあり、元本割れの可能性が少なくなります。また、値動きが違う複数の投資対象に分散投資をすることで、一つが下がっても他が上がっていれば、全体的な資産の増減幅を小さくし、心理的にも安心感が増します。

積み立ては時間分散とも言いますが、株価の高い時も低い時も買い続け、取得価格を平均化していくことで、資産増減の幅を緩やかにします。投資の専門家ではない長期個人投資家は、複雑なポートフォリオを組むより、運用資産は株と現金のみで良いでしょう。

長期投資の大家、ジェレミー・シーゲル教授も著書「株式投資の未来」の中で、「過去のデータを見ると、債券は比較的リスクの小さい資産と言われているが、17年以上の運用では株式に投資していた方が元本割れのリスクが小さくなる」と述べています。複雑なポートフォリオをリバランスしながら運用するのは大変なので、株式と現金でのリスクコントロールをオススメします。

金融商品における手数料と税金は大きなインパクトに

金融資産を買う時に気にすべきが、コストです。主なコストには手数料と、税金があります。

税金については、運用益に20.315%の税金が発生します。分離課税なので、他の事業所得や一時所得との損益通算も出来ません。ただし、NISA口座で運用すればこの税金が免除され、iDeCoなどの確定拠出年金も基本的にはかからないというメリットがあります。

金融商品を買う場合、買う時と売る時に手数料が発生し(投資信託と一部のETFは、証券会社によっても手数料無料になることもある)、投資信託の場合は信託報酬がかかります。この信託報酬は手数料のなかでも最大のコストです。なぜならば、コストが複利でかかってくるからです。

例えば、期待リターンが6%の投資信託を買ったとして、0.2%の信託報酬のA商品と、1.3%の信託報酬のB商品では、将来得られる利益の差がとてつもなく大きくなります。

A商品は期待値6%の複利運用から0.2%をマイナスするので、5.8%で運用することになり、B商品は6%から1.3%を引いた4.7%で運用になります。

それぞれ毎月2万円を20年複利運用した場合を見てみましょう。

A商品は、元本480万円が、902万4,960円になります。
B商品は、元本480万円が、794万1,883円になります。

この差が信託報酬の差になります。100万円以上の差になるので、投資する上で手数料は非常に大きなインパクトになることが分かります。

ETF(上場投資信託)とは?

リスクコントロールとコストコントロールを意識しながらiDeCoやつみたてNISAの税制優遇枠を使い切った後、投資対象として候補に上がってくるのがETF(上場投資信託)でしょう。投資信託同様に複数銘柄に分散投資が可能ですし、信託報酬はETFのほうが安いことが多いです。

例えば、米国のインデックスであるS&P500に連動したETFの「VOO」であれば信託報酬は0.02%ですが、同じS&P500に連動した投資信託のeMaxis Slim 米国株式(S&P500)であれば、信託報酬は0.0968%になります。

信託報酬としてはどちらも非常に安いですが、比較をすると4倍の差があります。ある程度の現金を一気に投資商品に変える場合は、投資信託に比べて信託報酬の少ないETFのを好む人も多くいます。

ETFは、「上場」している投資信託ですので、投資信託同様に様々な会社を一気に買うことができる利点がありますし、株式のように市場の値動きをダイレクトに判断しながら投資できる利点があります。また、投資対象が著名なインデックスを網羅していたり、セクター別に投資対象を選べます。投資信託だけでなく「ETF」を買っているのは少し玄人感もあり、投資系のYouTuberも多く紹介しています。

デメリットも理解しよう

一方で、ETFはデメリットもあります。以下を順番に見ていきましょう。

1)定額でのつみたて投資向いていない
2)配当金再投資がしづらい
3)iDeCoやつみたてNISAでETFは買えない
4)売買手数料がかかる
5)米国ETFを購入する場合は23時半から市場がオープンするので深夜まで起きていないといけない(サマータイムは22時半)

1)定額でのつみたて投資向いていない
積み立て投資は、ドルコスト平均法という「毎月同じ金額を買い続ける」ことが推奨されます。評価額が高いときも安い時も同じ金額を買うことで、高い時は少なく、安い時は多く買えるので購入価格の平均値を安定できます。投資信託は100円単位で購入価格を変えられますし、毎月同じ購入額に設定できます。

一方、ETFではほとんどの証券会社が自動積み立て設定ができないデメリットがあります。ETFの自動つみたて設定は、SBI証券などでしか行うことができません。また、ETFの場合は、口数単位で購入することになります。単価が随時変化していくので、例えばある時は1口380ドル(1$=108円で計算すると4万1,040円)のETFが、あるときは1口360ドルになっている場合もあれば400ドルになっている場合も有り得るので、一定額で買うことは難しいといえます。

また、毎月定期的に購入するには、1口4万円を超える額を出し続ける必要があり、毎月の投資金額を均一化するには、ETFの値動きを口数の増減で吸収しなければなりません。そのため、100口、200口と非常に大きな金額を投資する必要が出てきてしまい、個人には難しくなります。

2)配当金再投資がしづらい
投資信託やETFを運用していると、分配金がでることがあります。例えば、VOOであれば、1.41%の分配金が出ています(この分配金利回りは、2021年5月現在、直近1年間の分配金合計 ÷ 基準株価で計算)。

この分配金は再投資に回すことで、複利運用の効果を最大化できます。

投資信託であれば、「分配金を再投資する」という設定にすれば自動的に再投資にまわせますが、ETFの場合は再投資する場合に、1口を買える金額になるまで投資に回せないので投資信託に比べると機動力が無く機会損失になります。

また、配当にかかる税金も、いったん手元に現金化されてから再投資するETFのほうが多くかかってしまい不利になります。

3)iDeCoやつみたてNISAでETFは買えない
iDeCoではETFを買うことはできませんし、つみたてNISAではETFの取り扱いが極めて少なく限定的です。主要指数であるS&P500などに連動したETFの商品がありません。

4)売買手数料がかかる
ETFを買う場合には、株同様に売買手数料が発生します。この売買手数料は証券会社によって異なりますが、例えば楽天証券でも約定代金2.22米ドル以上の取引には、約定代金の0.495%(税込)が発生します。4,444.45米ドル以上の取引の場合は、上限が22米ドル(税込)となります。

投資信託であれば、購入手数料はノーロード(無料)なことが多いです。また、ETFを購入するときは約定代金の0.495%が手数料としてかかりますが、この%を下げるためには、4444.45米ドル以上の投資を一気に買っていくことで手数料の上限の22米ドルの比率が薄めることが可能です。

5)米国ETFを購入する場合は23時半から市場がオープンするので深夜まで起きていないといけない(サマータイムは22時半)

ETFは米国市場が空いている時間の売買が中心になります。深夜から早朝までとなるので、価格や日々のトレンドを細かくみながら価格に応じたダイレクトな売買が難しい場合があります。

課税口座で投資信託を買っていくことが一つの正解

以上の視点を網羅して考えていくと、同じ課税口座で運用するに場合、投資信託で配当金再投資をする場合と、ETFで配当金が単元になるまで待ってから投資する場合ではスピード感が変わります。

購入内容が同じだった場合には、ETFでは売買手数料がかかる分、イニシャルコストが不利になるケースがあります。「ドルコスト平均法がうまく行えない」、「配当金の再投資の機動力が無い」、と考えた時に、投資対象として投資信託よりも優先するべきとは決して言い切れません。

もちろん、配当金を受けとり、生活の足しにするなど「キャッシュフローを良くする」という意味ではETFは有用です。しかし、「資産をとにかく増やしたい」という場合は、実は投資信託を選んだ方が良いこともあります。

投資を始めると、まず投資信託を中心に、つみたてNISAやiDeCoを検討されると思いますが、もっと投資をしたい方も、課税口座で投資信託を買っていくことが一つの答えになります。

ETFや他の金融商品を色々と調べて見た結果、投資信託がかなり効率の良い投資先の一つだと気付かされます。「幸せの青い鳥は家にいた」ということになるのかもしれません。

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