「スペイン風邪」から新型コロナウイルス感染症まで、疫病に対する科学者たちの苦闘の歴史を克明に描いた『パンデミックの世紀』発売!

現在、 世界を揺るがしている 新型コロナウイルス感染症のパンデミック 。 多様な変異株の登場によって新たな局面を迎え、 事態の推移に対する予断を許さない状況が続いている。 本書は史上最も多くの死をもたらした疫病と言われる 「スペイン風邪」以降の100年を 「パンデミックの世紀」 と位置付け、 この期間に起こった代表的な感染症の流行について、 未知の病原体が発見されて急速に拡大していく様子や、 被害を食い止めるべく奮闘する科学者たちの姿を描き出すなかで、 感染症がいかに「認識の盲点」をすり抜けていったか を明らかにする一冊。 「認識の盲点」 とは何だろうか。第1章で扱う「スペイン風邪」においては、 それは病原体だった。 「スペイン風邪」はインフルエンザの一種だが、 著者は1918年当時の医学者たちがこの疫病を軽視していたと述べている。 その理由は、 彼らが「自分たちはインフルエンザの感染経路を把握している」と思い込んでいたことにある。 1892年にドイツの医学者が「インフルエンザ菌」を「発見」したことが世界中の新聞の見出しを飾り、 すぐにワクチンが作製されるだろうと考えられていたのだ。 しかし、 実際には、 インフルエンザの病原体は細菌よりも小さなウイルスだった。 そのことが明らかになるまでの間、 同定すべき病原体が細菌であるという間違った前提のもとに対策や研究が続けられてしまった ――これが「認識の盲点だ。 本書では10あまりの感染症について、 病原体の特定に関わる困難だけでなく、 感染症の報道をめぐるビジネス界の思惑や、 新たな病気の発見という栄誉をめぐる科学者たちの競争などを含めた社会の反応について詳述している。 そこから見えてくるのは、 私たちは 感染症が急速に拡大する過程では過剰なほどヒステリックに反応する にもかかわらず、 いったん収束するとパンデミックの記憶をすぐに忘れ去ってしまう ということ。 医師や科学者たちの努力によって貴重な知識や教訓が得られても、 新たなパンデミックが起こるたびに、 初めてそれに遭遇したかのように驚き、 またパニックに陥ってしまう――今回の新型コロナウイルス感染症でもそれは同様だったのではないだろうか。 本書を読めば、 現代はいかに疫病の流行が起こりやすい状況にあるか がわかる。著者は新たな疫病の流行は 「起きるかどうかではなく、 いつ起きるかの問題」 だと書いている。 『パンデミックの世紀』は いつかやってくるその時への備えにも重要な1冊。 本書の著者 マーク・ホニグスバウム は、 ロンドン大学シティ校で医学史を教える上級講師でジャーナリスト。 感染症の歴史を専門とし、 学術活動のほか、 科学をテーマにしたアニメーションの制作にも携わっており、 YouTubeのTed-Edチャンネルで見ることのできる 「パンデミックはどのようにして起こるのか?(How Pandemics Spread?)」 というアニメーションは300万回以上再生されている。 彼が10年にわたる調査をもとに書き下ろしたThe Pandemic Century: One Hundred Years of Panic, Hysteria, and Hubrisは 2019年の「フィナンシャル・タイムズ」ベストブック に選出された。 『パンデミックの世紀』は、 それに新型コロナウイルスの章を増補したThe Pandemic Century: A History of Global Contagion from the Spanish Flu to Covid-19の全訳。

各紙誌の書評

ホニグスバウムは医療の科学について説明する天賦の才を与えられた人物だ。 この本には、 疫学について知っておくべきことのすべてが書かれている。 ――「サンデー・タイムズ」紙 『パンデミックの世紀』に出てくる場面のいくつかはあまりに鮮明に描かれていて、 頭の中で映画のシーンのように再現された。 ホニグスバウムは、 我々がよく知っているものでも、 忘れ去られたものでも、 感染症には驚くべき類似性があることを明らかにしている。 ――「ニューヨーク・タイムズ」紙 手に汗握る。 ――「ネイチャー」誌

© 有限会社ルーフトップ