栃木県が独自の「ゲノム解析」開始 変異株7割超、早期把握へ

県内新型コロナ変異株検査の陽性件数と陽性率の推移

 感染力が強いとされる新型コロナウイルスの変異株の監視を強化するため、栃木県は25日までに、ウイルスの変異を精密にチェックする「ゲノム解析」を独自に開始した。県内の変異株感染者の割合は直近1週間(5月17~23日)で70.5%と過去最高となり、前週の53.1%から急拡大した。従来の株からの置き換わりが進む中、県はゲノム解析を県内2カ所の医療機関に委託したほか、県保健環境センターでも準備を進めている。変異株の広がりを早期に把握し、感染拡大防止につなげたい考えだ。

 25日現在、県内のコロナ感染者は6136人。うち、変異株感染者は463人に上る。3月下旬~4月中旬、変異株の割合は10%台だったが、4月下旬から急増し、変異株感染者を含むクラスター(感染者集団)も相次いでいる。

 県は3月以降、国立感染症研究所(東京都新宿区)に検体を送って変異株の種類を特定してきたが、全国から依頼が殺到する同研究所では結果の通知まで2週間以上を要し、現時点で全体の1割しか判明していない。

 変異株の監視強化のため、県は宇都宮市や民間検査機関と連携し、原則全ての新規感染者を変異株の検査対象とした上で、4月30日に県内の医療機関2カ所にゲノム解析を委託。県独自で解析を行える体制整備を進めている。変異株感染者のうち、特に感染源などが懸念されるものを解析の対象としている。

 県内で行うことで数日のうちに解析できるメリットがあり、今月21日までに15検体の解析が行われた。16日にはインドに由来する変異株を県内で初めて確認した。

 新型コロナウイルスに約3万ある遺伝子情報を解析して変異を把握し、その特徴から感染経路を科学的に示すことが可能になる。局所的に対策を講じて感染拡大を食い止めていく。

 県感染症対策課の担当者は「変異の早期把握に努め的確な情報を発信していきたい」とし、県民には「これまでよりも、変異株への置き換わりにより感染の可能性が高くなる。より注意してほしい」と呼び掛けている。

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