ソフトバンク・東浜の一軍帰還を阻んだ〝コロナ後遺症〟死活問題だった味覚&嗅覚異常

ようやく再スタートを切った東浜

苦しいリハビリを乗り越え、一軍の舞台に戻ってきた。右肩不調の影響などで出遅れていたソフトバンク・東浜巨投手(30)が、26日の中日との交流戦(バンテリン)に今季初先発。6回途中3失点で勝ちはつかなかったが、ようやく再スタートを切った。

初回、2回と三者凡退に抑え、最速は150キロ。要所では伝家の宝刀シンカーで併殺、三振を奪った。6回二死から勝ち越し点を献上し「悔いが残る。イニング途中での降板になり、中継ぎの方に申し訳ない」と悔しさをにじませつつも「次はもっと長いイニングを投げて勝利に貢献したい」と前を向いた。

昨年11月、右肩の不調を訴えて日本シリーズを前にチームを離脱した。一軍帰還に要した時間は半年以上。「想定よりも遅れた」。率直な感想だった。「箇所が箇所だけに難しさを感じた」。

復帰が遅れたのは、それだけが理由ではなかった。昨年末に新型コロナウイルスに感染。濃厚接触認定を受けたスタッフへの申し訳なさが募った。味覚と嗅覚の異常に苦しめられ、食が進まない日々。アスリートにとっては死活問題だった。

精神的にも追い込まれた。味覚、嗅覚が3月に入っても正常に戻らなかったからだ。この時、筑後ファーム施設で練習する東浜からは笑顔が消えていた。「野球をやる以前に、自分の体は本当に大丈夫なのかという不安にかられたようだ。野球に集中するのが難しそうだった」(チーム関係者)。ただでさえ忍耐を強いられるリハビリ生活。前向きな精神状態をつくるために誰もが腐心する中で、新型コロナの後遺症が復帰ロードを阻んだ。

「なかなか辛い時期もありましたけど、こうやってマウンドに立てるところに来た。しっかり前を向いて投げていきたいです」。気持ちを奮い立たせて、前進あるのみ――。たくましくなって帰ってきた。

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