交流戦で大当たりのバレンティン ヤクルト時代の“恩師”が指摘 DH限定の卒業に必要なのは

交流戦の巨人戦、5回裏2死二塁、左中間にこの日2本目の本塁打を放つバレンティン(28日、福岡PayPayドーム)

【新IDアナライザー 伊勢孝夫】やっぱり交流戦では打つな。しかも2発。低めのカーブを泳ぎながら運んだ1本目は下半身が崩れず、左手が最後まで離れなかった。上体がとても強い分、下半身がついていかないことがあるが、今日は下に粘りがあって左壁がつぶれず止まっていた。

2本目はシーズン60発を打った時のようなスイングで、文句なしだった。インコース要求の球が中に入った打ちどころの140キロ真っすぐ。パ・リーグではまず来ない球だったが、完璧な一打に弾みがつくことだろう。

彼の最近の動きを伝え聞いたところによれば、非常に状態がいいのだろう。褒められるほどの守備力はないが、前カードの中日ビジター3連戦では左翼守備の練習に精を出していたと聞く。コンディションが良いから「俺を使え!」というアピールができるわけだ。打撃の感覚も良く、自信があるのだろう。今日の結果と最近の行動からも、期待が持てると感じている。

ただ現状は「DH限定」のスタメンと見る。彼は、1試合を通しての選手。セ・リーグ主催試合、その先のペナントでも頭から使ってもらうには「真価」を見せる必要がある。ズバリ速い真っすぐを打てるか。150キロの球を打ち損じず捉えられるかが一つのポイント。また、詳細は控えるが「弱点」を攻められた時の対応も含めて、試されているはずだ。この日の巨人戦で放った2発だけで、王者ソフトバンクの首脳陣が合格点を与えているとは思わない。

最後に、バレンティンにとってありがたいことがある。小久保ヘッドコーチの存在だ。中日戦では代打2打席に立って快音を響かせられなかったが、そこでの打撃内容を小久保ヘッドが評価していたと聞く。たとえメディアを通じてであっても「自分のことを見てくれている」と伝わることが特に外国人選手は大切。今、彼は気持ちよくプレーできているはずだ。60発を放ったヤクルト時代に面倒を見させてもらった私には、確かにそう映る。(本紙評論家)

© 株式会社東京スポーツ新聞社