千葉市の開業医、水野幸一さん(83)が、1960~70年代の長崎県内の様子を収めた写真など8千点以上を県立長崎図書館郷土課に寄贈した。学生時代に12年間、長崎市で生活し、自然景観や街並み、伝統行事などを撮りためていた。水野さんは「ずっと長崎に返したいと思っていた。寄贈できて良かった」と喜んでいる。
千葉市出身の水野さんは1959年に長崎大医学部に入学し、71年に同大大学院医学研究科を修了。その後千葉に戻り、胃腸科・内科医院を開業した。
高校時代からカメラが趣味で、大学進学後に住んだ長崎市の他、県内の離島や半島、県北などを撮影して回った。大学院時代に結婚。同市戸石地区で4年間暮らしたため、牧島など東長崎地区や諫早市飯盛地区で撮った写真も多い。
2016年、長崎で撮りためた写真の一部を写真集「長崎写縁」として長崎文献社から発行。その後、水野さんが未掲載写真のネガフィルムを大量に保管していると知った長崎市内の男性が寄贈を提案。水野さんがこれに応じ、男性がネガフィルムを全てデータ化した。
今月、8千点余りの写真データやネガフィルムの原本、長崎写縁10冊などを県立長崎図書館に寄贈。60~70年代に長崎市で撮影した長崎くんちやペーロンの様子、金比羅山から眺めた長崎港、思案橋の街並みなどの他、五島や島原、平戸などの写真もある。同館郷土課は整理を進めるが、一般の閲覧が可能になる時期は未定という。
水野さんは「長崎の人情を感じさせる街並みが好きで、休みのたびにカメラを持って出掛けた。長崎のために活用されれば」と話した。