世界禁煙デー

 私事で恐縮です-と前置きすべきだろうか。世の中はこんなに「分煙」が進んでいたのか、と発見に近い気持ちで実感している。喫煙所に足を運ばなければ、あの“いい匂い”を嗅ぐことなく一日が過ぎていく▲もちろん、いい匂いかどうか、感じ方が人によって分かれるからこその分煙なのだし、そもそも分煙には、それ以前に害悪だらけの喫煙習慣から非喫煙者を守るという切実な目的がある。ともあれ、自分の決意一つで喫煙者は煙から相当に遠ざかることが可能になった▲近年、「加熱式たばこ」の普及が進んでいる。紙巻きたばことの大きな違いは、人にあげたり、もらったりできないことかもしれない。1本どうだ-取調室の刑事さんが容疑者に、会社の上役が部下に…そんなシーンは加熱式では成立しにくい▲「1本ちょうだい」は、死語になりつつある。リバウンドの誘惑が閉ざされる。新たな喫煙人口の誕生も抑制されていることだろう▲あす31日は「世界禁煙デー」。昨年は「卒煙の好機」と呼び掛ける同僚の記事を舌打ちしながら読んだ覚えが▲始まりの日を正確に覚えている時点でまだまだホンモノとは言えない…と自戒しつつ書くのだが、たばこを吸わなくなってきょうで8週間。意外に続いている。今の世の中は禁煙の初心者に優しい。(智)

 


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