【追う!マイ・カナガワ】点字ブロックに並ばないで(下)バス依存のまちだからこそ

平塚駅北口・ロータリーのバス乗り場

 「JR平塚駅のバス乗り場で、点字ブロックの上に人が並んでいる状況を頻繁に見ます」との指摘が「追う! マイ・カナガワ」取材班に寄せられた。指摘した女性の「改善するにはいったいどこに相談すれば?」との声に、取材を進めると、路線バスに多くを依存するまちの課題が見えてきた。

◆バリアフリー仕様

 神奈川県平塚市はこの問題をどう考えているのだろうか-。問い合わせると、市は現地調査を行って整列テープの有無などが書かれた地図も制作して取材に応じた。

 同市交通政策課によると、市は2005年から平塚駅周辺を「重点整備地区」とし、高齢者や障がい者が利用しやすいまちづくりに取り組み、北口のロータリーは09年にバリアフリー仕様に再整備。14年には当事者団体や交通事業者ともバリアフリー推進協議会を発足させている。

 こうした取り組みにもかかわらず、市民らから「点字ブロックの上にバス待ち合いの人が並んでいる」などと苦情が寄せられたことがあり、神奈川中央交通に整列テープなどの対応を依頼しているという。

 2、3番乗り場などの土地は市の所有で、「バス停の上屋や点字ブロックなどは市が整備した」というが、「バス利用者をどう誘導するかは、事業者の責任としてお願いしている」と担当者。ただ、テープが薄れ、劣化している乗り場もあり、事業者だけに任せていていいのかは疑問に感じた。

 点字ブロックの利用や整備に詳しい日本視覚障害者団体連合(東京都)は「バス停の整列テープの整備などは、自治体と事業者が協議して決めるべきだ。連携して啓発していく必要があると思う」と指摘する。市も「点字ブロックの上に並んでしまう状況があることは、協議会の議題でも提案していきたい」と今後は対応していくという。

◆市内に1駅のみ

 人口約25万7千人の平塚は、ほかの同規模のまちと比べても、よりバスに依存していることも分かってきた。市内に鉄道駅は平塚駅しかなく、市の担当者も「駅は一つしかなく、ほとんどの方はバスを利用している」と認識を示す。

 隣の茅ケ崎市(約24万2千人)にはJR東海道線に加え、相模線の駅もあるため通勤通学ルートが分散され、茅ケ崎駅のバス乗り場は平塚駅の約半数だ。

 県内の人口10万人以上の15市を見ても、横浜市の162駅を筆頭に、平塚より人口が少ない小田原(18駅)や鎌倉(18駅)、海老名(9駅)、大和(8駅)などでも駅は多い。

 JR東日本によると平塚駅の1日の平均乗降客数は約12万人。市民の足として同駅のバス乗り場に人が集中し、バスに多くを依存したまちづくりが不可避だからこそ、市と事業者が一体となった取り組みが求められている。

◆取材班から

 平塚駅周辺を何度か歩いた。自転車と歩行者の通行帯が分けられていたり、点字ブロックが生活道にも整備されていたりと、地域を挙げてのバリアフリー化への取り組みが随所に見られた。そんな中で、2、3番乗り場の問題は置き去りにされてしまったようだ。点字ブロック上に人が並ぶ現象は、各地で起きている─。そう認識して利用者も自治体も事業者も、みんなでこの問題を考えたい。

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