故小崎修道士の著書「長崎のコルベ神父」 アメリカで出版へ 長崎純心大・荒木教授 遺志継承し英訳

小崎さんの遺志を受け、「多くの人にコルベ神父の存在を知ってほしい」と語る荒木教授=長崎市三ツ山町、長崎純心大

 長崎でキリスト教を広めた後、アウシュビッツ強制収容所で人の身代わりになった故コルベ神父。長崎で被爆したカトリック修道士、小崎登明さんはその生き方に感銘を受け、研究を続けてきたが、4月に93歳で亡くなった。神父の徳を世界に伝えたいという遺志を受け継ぎ、親交があった長崎純心大の荒木慎一郎教授(68)は小崎さんの著書を英訳。神父没後80周年の8月14日までに米国で出版する予定だ。
 荒木教授は2018年末ごろ、共通の知人の紹介で小崎さんと知り合った。初めて会ったのは聖コルベ記念館(長崎市本河内2丁目)の部屋。神父に関する写真やノート、ファイルがぎっしりと置いてあった。小崎さんは「神父様が知られていないのは残念。たくさんの人に知ってもらいたい」と老いを感じさせない熱量で語ったという。
 荒木教授もカトリックだった祖母の影響でコルベ神父に関心はあった。小崎さんに何かを頼まれたわけではない。それでも「心にトゲが刺さったような感覚。私に何ができるのか」と考え、原爆関連書籍を英訳した経験を生かせば海外に伝えられると思い立った。「近づいたら引き込まれる。小崎さんにはそんなエネルギーがあった」
 取り上げたのは、小崎さんが神父の長崎滞在中の逸話などをまとめた「長崎のコルベ神父」。参考文献を探すうちに、米カトリック系出版社が興味を示し、米国内での出版を申し出た。コルベ神父関連書籍の英訳経験を持つ米ジョージタウン大のケビン・ドーク教授が校正に協力した。
 小崎さんは19年1月ごろから月2回程度、荒木教授と会い、電話や文通も交えてやりとり。荒木教授の指導する学生らには被爆体験を語り聞かせた。
 英訳版は20年3月に完成。日本語版にはない神父関連の写真約10枚も掲載した。今年2月ごろ、本人に渡す予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で出版が延期され、結局かなわなかった。
 小崎さんは生前、修道名にちなみ“トマさん”の愛称で親しまれた。荒木さんは「トマさんは天国でも、私たちのために働き続けていると思う。多くの人にコルベ神父の存在が知られ、平和な世界になっていけば」と願いを込める。


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