【客論】 国際協力機構(JICA)ジンバブエ支所長 河澄恭輔

大きく変わる国際協力の姿

 国際協力機構(JICA)ジンバブエ支所での勤務が決まり、5月上旬に無事、現地に到着しました。2週間の自己隔離中、首都ハラレの小さなホテルでこの原稿を書いています。写真は首都郊外辺りですが、アフリカの大地の広大さを改めて感じています。
 これまでアフリカのいくつかの国で勤務し、日本の政府開発援助(ODA)に携わってきました。国際協力というと、発展した裕福な国が貧困に苦しむ国を支援する、といったイメージが根強いかもしれません。もちろん人道的な観点からの支援は大切ですが、日本の地域社会や経済もさまざまな課題を抱える中で、国際協力の在り方は大きく変わりつつあります。
 2015年の国連サミットで採択されたのが「SDGs(持続可能な開発目標)」。あらゆる国や組織、個人が同じ責任と権利の下、平和で安定した世界の構築に向けて取り組んでいくことが求められています。すなわち、日本と発展途上国が補い合い、それぞれの課題を解決していく手段の一つが国際協力であるとも言えましょう。
 さて、この3月まで宮崎大学国際連携センターに勤務し、「地域の国際化」に関する事業に関わりました。「宮崎-バングラデシュ・モデル」は宮崎大学、宮崎市、地元企業、JICAが連携し、バングラデシュの優秀なICT人材を宮崎大の短期留学生として受け入れ、徹底した日本語教育とインターンシップを通じて、地元企業への就職と定着を支援するプログラムです。既に50名近い人材が県内各地で活躍、人材確保に悩む地方への高度外国人材の導入モデルとして全国的に注目を集めています。
 また、このプログラムのパートナーである宮崎の教育IT企業は、日本の高校生をケニアの大学生とITでつなぎ、生きた英語を学ぶ機会を提供するという新たな英語学習サービスを開発。全国の高校で採用が広がっています。ポスト・コロナの社会でICTの重要性がさらに高まることは明らかですが、それに伴って物理的な距離はあまり問題ではなくなってきます。遠隔地という不利な条件を抱える宮崎から、世界とつながる新たな試みやサービスが生まれるのは必然と言えるのかもしれません。
 日本の「あしなが育英会」はアフリカでも孤児支援に取り組んでいます。優秀な子供たちには欧米や日本で高等教育を受ける道も開かれていて、都城東高校にはウガンダ人高校生のニコラス君が留学しています。昨年、ニコラス君は選挙で生徒会長に選ばれました。支援される立場であったニコラス君が、今や生徒会運営をリードする役割を担っていること自体、SDGsの下での日本と開発途上国との新たな関係性を象徴していると言えます。新しい地域社会の姿が宮崎で少しずつ形作られていることに、ぜひご注目下さい。
 かわずみ・きょうすけ 1962年、愛媛県出身。94年国際協力事業団に入り、アフリカの開発援助に従事。趣味はマラソン。ジンバブエ在住。

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