新型コロナウイルスの感染経験者の抗体を治療に役立てる研究が、都内などの医療機関で行われている。
昨夏に感染した平塚市万田に住む水嶋祥貴さん(44)も参加した。
感染判明後は周囲の無理解に苦しんできただけに、「感染者を救うために役立つのなら、つらい経験も意味があった」と前向きに話している。
◆醤油もコショウも
昨年7月。同市明石町で老舗はんこ店を営む水嶋さんは、昼に近くのラーメン屋ののれんをくぐった。
しょうゆラーメンにたっぷりとコショウを振って麺をすすったが、味を感じなかった。
「まさか…」。新型コロナ感染が頭をよぎった。
不安に駆られ、翌日に市内の病院で検査を受けると、結果は陽性だった。
◆街で後ろ指さされ
その日に大磯町内の病院に入院。症状は悪化せず、2週間後に退院した。
その後は後遺症もなく、日常生活を送っている。しかし、水嶋さんの心はしばらく晴れなかった。
水嶋さんとの濃厚接触者は約20人。全員陰性だったものの、しばらく欠勤を余儀なくされた友人もいる。「迷惑を掛けてしまった」と罪悪感にさいなまれた。
街を歩くと「水嶋がいたぞ。大丈夫なのか」と、後ろ指をさされたこともある。「本当にくじけそうになった」と、当時の苦悩を口にする。